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3-36.第23の願い 鈴成 凛悟

 明るい闇の中、凛悟は対峙する。

 神と。


「3日ぶりだな。まさか再び君にまみえるとは、あの時(・・・)は思ってもみなかったぞ」


 光の人型、”神”は感慨深そうな声で凛悟に語りかける。


「よく言うぜ、こうなるように仕組んだ張本人だろ、あんたは」

「その問いに答えよう。その通りだ。だが、あの時(・・・)はそう思っていなかったのも事実だ」

「それを聞いて安心した。これで俺の願いを言うことが出来る」


 ホッとしたように胸をなでおろし、凛悟は軽く息を吐く。

 シャツは血まみれで胸の痛みと不快感は消えてないが、この神の座に来る前のような命が失われていくような感覚は消えていた。

 これならしばらくは()つだろう。

 

「ちょっと待って下さる。その前に聞きたいことがありますの」

「わたくし、どうしてもわからないことがあるんですのよ」


 明るい闇の影からふたりの女性が姿を現す。

 それは双子と見紛うほどそっくりで、とても良い笑顔をしていた。

 この世の因果から外れた傍観者、1周目と2周目のミラ・ミュラーである。


「いいぜ、ミラさんたちのおかげで俺はここまで来れたようなものだからな。何でも聞いてくれ」

「あら、わたくしたちを見ても驚きもしませんのね」

「”本”で知っていたからな。そしてこの”祝福ゲーム”が2周目であることを考えれば、ミラさんがふたりいても不思議じゃないさ。いや、正確にはこれも1周目なのかもな。俺が第10の願いを叶えた以降は1周目のミラさんが知らない展開になっているはずだ」


 凛悟は驚いた様子もなく言う。

 時間を紐に例えたなら、今の状態はクルッと1回転して進んでいるようなものかと考えながら。


「あなたのおっしゃる通りですわ。この先の展開はわたくしにもわかりません」

「だからこそ知りたいのですわ」

「「どうしたあなたは自分に”祝福”が再び宿ると確信していらっしゃったのですか?」」


 ふたりの声がハモる。

 エゴルトと凛悟の決戦の最後、凛悟はまるで確信しているようだった。

 エゴルトの死によって人類にランダムに移るはずの”祝福”を自分が手にすると。


「蜜子のおかげさ。蜜子は奇跡を願った。そして憶えていないか、この”祝福ゲーム”の始まり、そこで神が『約80億分の1という奇跡とも呼べる確率で望みの者に権利が移るかもしれないぞ』と言っていたことを」


 ミラたちの頭の中で記憶のパズルがカチリとはまる。

 確かにその発言があったと。


「エゴルトとの決戦の時、俺は心でずっと望んでいた。奇跡で俺の手に”祝福”が宿ることを。『神は自らの発言のみに縛られる』という言葉があるだろ。だから、奇跡が起きたならこうなるだろうと確信していたのさ。でもそれだけじゃない」


 凛悟の自信たっぷりの態度にミラたちの興味がそそられる。


「それだけじゃないことって、何かしら?」

「手に汗握りますわ」


 半身を乗り出して、ふたりは凛悟の次の言葉を待つ。


「それはな……」

「「それは?」」

「この後のお楽しみだ」


 茶化すような凛悟の口ぶりにミラたちは「「えぇ~」」と肩を落とす。


「心配しなくてもいい。すぐにわかるさ。これから俺が願いを言えば。ところで神様、俺がこれから何を願うか知ってるかい?」

「その問いに答えよう。知らない、だが予想は出来る。君は『死んだ人間は生き返らないというルールの撤廃』を願うのではないかね? この”祝福ゲーム”ではあまりにも人が死に過ぎた。君の大切な花畑蜜子を生き返らせるにはその制限(ルール)の撤廃が必須条件のはずだ」


 神の発言に凛悟はニヤリと笑うと、わざとらしく首を振る。


「それを聞いて増々安心した。あんたは全能かもしれないが全知じゃない。俺の願いは違う」

「ほほう、それでは言ってみたまえ、君の願いを」


 神のその言葉には少し挑戦的な色が混じっていた。

 凛悟はそれに受けて立つように真っ直ぐに神を見る。

 いや、彼のやろうとしていたことは文字通り挑むことだった。


「賭けがしたい。この“祝福ゲーム”が始まってから死んでいった人達を含めた全人類を代表してあんたと賭けを。賭けの内容と何を賭けるかは俺が決める!」

「ほう!」


 ミラたちは初めて神の驚きの声を聞いた。

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