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3-22.幕間3 ミラ・ミュラー

 この”祝福ゲーム”が始まってから幾人もの死者が出た。

 キングのパレードで人が密集していたことがあだとなり、恐竜の復活による死者は約1億人。

 世界人口80億人からすれば社会に大きな影響はないかもしれない。

 (みのり)のファンの数百人が加わっても、それは誤差にしかならない。

 しかし、個人レベルでの影響は大きい。

 大切な家族、長年の友人、愛する恋人、それらが一夜で命を失ったのだ。

 彼らの悲しみは筆舌に尽くしがたい。

 だが、その悲しみをまるでフィクションのように観賞する者がいた。

 神の座でくつろぐミラたちである。


「出そろいましたね」

「ええ、目ぼしい”祝福”はみんな使われてしまいましたわ」


 (みのり)の第16の願いが叶えられ、残りの祝福は8。

 まだ多く残っていると思えるかもしれないが、祝福を保持しているのは3つの勢力に限られていた。


「主な勢力は3つ、エゴルトと(みのり)と凛悟さんですわね」

「そうですわ。でも、エゴルトの勝ちでほぼ決まっていません?」

「ですわね。エゴルト自身に2つ、エゴルトに買収されている人達で3つ。5つを抑えられていてはね」


 ”祝福”は”祝福ゲーム”におけるワイルドカード、そして切り札(ジョーカー)

 それを多く確保している勢力が有利なのは間違いない。


「次に”祝福”を持っているのは凛悟さんたちの2つですけど……」

「蜜子さんはエゴルトの手の中、藤堂さんは(みのり)ATM(ファン)になってしまっていますもの。自由に使えるのは実質ゼロですわ」

「ですよね。蜜子さんか藤堂さんが自分の判断で今”祝福”を使えば逆転出来るかもしれませんけど」


 いわゆる神の視点で観ているふたりは知っている。

 エゴルトも(みのり)も最終目標は”祝福”の独占。

 そのための布石をふたりが置いていることを。


「わたくしとしては凛悟さんたちに逆転して欲しいですわ」

「同感ですわね。彼らは他の人の幸せを願っている方ですから。でも、まず無理でしょうね。神様はどう思います?」


 姿は見えずとも神はいつも彼女たちの傍らにいる。

 ミラが虚空に向かって声をかけるといつもとは少し違う返事が返ってきた。


「その問いに答える前にひとつ助言しておこう。君たちは忘れていることがあるのではないかね?」


 ミラたちは顔を見合わせてをポンと叩く。


「そうでしたわね」

「ええ、彼にも奥の手(・・・)がありました」

「「つまり、神様は凛悟さんが勝者になると思ってらっしゃるの?」」


 ふたりになったとはいえ、性格は同じ。

 ミラたちは見事なユニゾンで神に問いかける。


「その問いに答えよう。我は勝者には関心がない。どのようになろうと我はその結果を享受する。だが……」


 少しの間をおいて神は続ける。


「我があれら(・・・)を”祝福”と名付けた気持ちは()んでもらいたいものだ」


 今までの”祝福者”と”神”との会話を聞いてミラたちは感じていた。

 この”神”には感情も心もある。

 しかもそれは人間の基準で()いものなのだと。

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