表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/98

1-1.第1の願い クリストファー・グッドマン

 ”祝福者“クリストファー・グッドマン”はその名が示す通り善良な男だった。

 敬虔(けいけん)とまではいかなくとも、信仰心の深いクリスチャンであったし、その行動には常に善性に満ちていた。

 だから彼は周囲の人々から好ましく思われていたし、だからこそ彼の境遇に同情する者も多かった。

 昼下がりの病室で彼は娘の手を握る。

 娘の、キャロル・グッドマンの手は弱々しく、ピッピッと音を立てる計器の数値はなお弱々しかった。


「……パパ」

 

 幼い娘の手をグッドマンは優しく握り続ける。

 妻を事故で亡くし、娘が治らぬ病に侵されていると知った時、彼は一時ではあるが神を呪った。

 

「大丈夫。何も心配いらないよ」

「パパ……、あたしまだ生きてる?」


 もはや夢と(うつつ)の境も曖昧(あいまい)なのだろう。

 その命が尽きるのは1週間後かもしれない、明日かもしれない、今かもしれない。

 医者がグッドマンに説明した内容は”絶望”だった。

 強い決意を込めてグッドマンは言う。


「大丈夫。パパが必ず助けてみせる」


 そして彼は願った、強く、強く、誰よりも早く。


 神よ! 私は願う! 私の娘に健康な身体を!


 彼が感じたのは暖かい春の陽射しとピッピッという電子音。

 そして、弱々しくも力強く握り返す娘の手だった。


「ねえパパ、あたし夢を見ているのかしら? ちっとも苦しくないの」

「夢じゃない! 夢でなんかあるものか!」


 グッドマンはキャロルを抱きしめ、涙を流しながら神に感謝した。

 確かな命がそこにあった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ