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第1話


神聖骸伝説


古代の文学作品。神聖なる存在の遺骸である神聖骸(Divine Relics)を巡る物語全般を言う。伝説の基本的な形として聖女が登場する。聖女は神聖骸を利用する存在の象徴であり、数々の危機を乗り越え、人々から祝福された。


武勲や恋愛を含むヒロイック・ファンタジーの要素は、現代でも好んで取り上げられている。物語は聖女が死んだことをきっかけに、繁栄が終焉することになる。










◇ ◇









眼の前で苦しんでいる病気の子供を、僕の力で癒す。


「ありがとうございます聖女様!子供を治して頂いて」

「気にしないで!僕に出来ることをしているだけだから。それじゃあお元気で〜!!」


感謝してくれる子供の母親へ笑顔で手を降って、彼らの居住区を後にする。


「ふふーん♪やっぱり聖女様の力を使って感謝されるのは気持ちがいいな」


僕は真っ白な廊下を早歩きで駆けていく。

すれ違う研究員の人達が僕のことを見て、怪訝な表情をしているけど無理もない。なにせ、こっそり抜け出しているからね。


「よーし、今日こそは研究所から抜け出して外の市街へ行くぞ〜」


窮屈な研究所の生活を抜け出して、僕の助けを待っている人々のところへいざ向かわん!


「駄目だ」

「げ!」


けれど、そんな僕の目の前に最大の障害である彼が現れた。


「何度言えば分かる。勝手な行動はするな」

「いいじゃん!イサク!!もう僕は一人前の聖女さ!いつまで、こんな研究所に押し込められないといけないんだよ!」


僕の世話係というか、計画の最高責任者である科学者イサク。彼は生まれてからずっと僕をこの研究所から出してくれない。


「………」

「な、なにか言えよう……」


僕の反論に対して、怒るわけでもなく、ただ感情の読めない冷たい目でイサクは僕を見下ろしてくる。

くそぉ、下手に怒らないから、余計何考えてるのか分からなくて怖いんだよ。


「……確かに。そろそろかもしれないな」

「え!?それって僕、外に出れるの!!」


期待が膨らみ、喜ぶ僕の顔の高さへ、イサクは膝を落とし視線を合わせた。


「プロシア」

「はい!」


僕の名前はプロシア。


「お前は何のために生まれた?」

「聖女の代用品として!!」


失われた聖女様の代わりとして、この研究所で生み出された代用品だ。










◇ ◇









15年前。王国の象徴たる聖女が死んだ。


人々は悲しみ、絶望した。

王国の繁栄は、全て聖女からの献身があったからである。ただの小国に過ぎなかった王国は聖女を通して得られた魔法のような力と技術により、強大な国家となった。


「聖女を蘇らせましょう」


混乱の最中、一人の科学者が提案した。


「聖女は我々の願いを叶え続けてきた。ならば、我々が彼女の復活を望めばそれに答えてくれる」


その科学者の名はイサク。

既に亡くなった聖女という存在をまるで無視するかのような、狂気じみた提案に当初、王国の上層部は理解を示さなかった。


「残された聖女の遺体から、複製品を造るのです。いや──求める機能からすれば代用品にしか過ぎない」


イサクの計画は、人の倫理を踏み外す行為であった。


「聖女の代用品を利用して、失われた聖女の復活を」


だが、既に聖女による繁栄という蜜を味わってきた王国にとって、その提案は抗えない誘惑だった。


斯くして、聖女の復活を目的とした計画が始まる。それが当たり前の事のように、イサクは淡々と準備を始めた。


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