2/35
02.王子5歳・夏。初めての川。
「ありちゃ、川に入ったことありゅ?」
キラキラした川の前で馬車を止めさせたかと思うと、これまたキラキラした目でオースティン様が私を見上げています。
「はい、ございますよ」
まぁ普通の令嬢なら入ったことはないでしょうけどね。
私は子だくさんの末端子爵家で生まれて、五歳までは割と自由に遊ばせてもらったので。
「きもちーの?」
「そうですね、夏の暑い時に入ると格別です」
「ぼくもはいりゅー!」
「えっ!!」
止める間もなく馬車から飛び降りたオースティン様は。
ザップーーン!!
「王子ぃぃいいいいいい!!」
「わぁぁあああ! ありちゃぁあああ!」
私も飛び込んで助けました。
今から公務だというのに、どうすんですかこれ。