169話/理想Ⅰ
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神「奴が介入するとは…な…」
元「見た。すべて…な」
神「その上で、俺に歯向かうと?」
元「もちろん。抵抗するとも」
神「それに何の価値がーーー」
元「価値?いや、認めたら死ぬじゃん」
神「死ぬ死なないの問題か?」
元「そうだろ。価値とか、そんな物はくだらないって。人間が積み上げてきた物の真価とか有るのか?」
神「ただ、生きるというだけで、我々の案を破棄すると」
元「うん。お前たちは、人類がそうあるから、こうあるべき。っていう話は、そもそもの一般人に関係ない話なんだよ。俺は、俺のやる事を果たせればそれで良い」
神「なら、何故世界を救う?」
元「救う?綺麗事だな。救う気なんて無い無い。偶々、俺の目的に人類絶滅されたら困るから、こうしてるだけだ。」
神「全ては、自分の為。と…」
元「うん。それしかないよ。救う価値なんて無い。まぁ、正論かもね。実際に此処まで荒れている世界は退廃するべきだとは思う。でも、それはお前たちが強制的に終わらせていい話ではない。終わりは自分達でしっかり片付ける。お前たちに手を借りる必要なんてないんだ」
神「では、その価値を俺に示すがいい。この世界が、お前たちの理想で無いと。証明してみろ」
元「それなら。簡単だろう?」
神「なんだ?」
元「何より、この世界が理想では無いと思っているのは、お前たち自身だろ?」
神「どういう意味だ?」
元「簡単だよ。何より、この世界に何の感情も抱けないのは、神自身だろう?」
神「ほぅ?」
元「退廃も進歩も無いこの世界に、飽きているのはお前だろ?」
神「それが理想では無いと」
元「うん。これが理想なら前世界で神は人間に関わらなかったと思う。人間を勝手に弄り、動かす歯車にして、継続だけさせるのが最適解だった筈だろ?それを前世界でしなかったというのは」
神「正しいと思っていたから…か」
元「うん。それしかないじゃん。神は人間の考えが全く分からない。いや、分かりたくないだけかもね」
神「分かる必要すらないからな」
元「でも、前世界は残した。滅ぶまで。その終わりが無様でも。そしてこの世界を作った、理想を捨て、ただ平和である。でもそれ以外何も無い。人間に生も死も無い。繰り返す世界。終わりも始まりも、ずっと続くだけの世界を」