154話/煤Ⅰ
??「やっぱり、痛えな。これ」
元「え?何故?」
??「俺には、魔回路なんて大層な物ねぇからな。血管とか神経とか、その他諸々に直接魔力流してるんだよ。だから、普通に腕とか焦げるし」
元「治療は?」
??「う〜ん。放置かなぁ。俺ら厄災能力保持者は、怪我程度とか火傷程度じゃ、消えないんだよ。肉体は。魂そのものが攻撃されて、燃え尽きかけたら肉体も流石に消えるけどな」
元「魂の怪我をしない限り、どんだけ外傷を負っても死なないと」
??「うん。首が切れようが、数日引っ付けて置いておけば治るし。」
元「化け物だな…」
??「いや、お前もそうだと思うぞ。それに魔回路があるなら、まだマシだ。俺は魔心はあっても、魔回路はないから。溜まった魔力はそのまま心臓に負荷。マジで痛いぞ?」
元「痛覚は?」
??「普通にある。俺達の肉体は欠陥が生じないように作られる。絶対に死なないようにと、永遠に生き続けるように」
元「鬼だな」
??「そりゃあ。ここの人間と比べたら、同じぐらいだな」
元「というか、その燃え尽きた神経とかは?」
??「切り落とすしか無いだろ、俺達は言えば、再生力が強いってだけだ。しかし、それは細胞が生きていればの話。死んでるなら、切り落として、そのまま再生するまで待つだけ」
元「うわァ…」
??「引くな。まぁ…この体も仮初め、Fakerだ」
元「Faker?なんだ?無機物の合成肉体みたいな?」
??「近いな。人間をそのまま模倣して、造ったものだな。魔回路も神経もそのまま。痛みは全部所有者と共有してるからな。この腕を切り落としたら、本体も切り落とされた、感覚になる。その分の痛覚も」
元「本体は、そのままなのか?」
??「あぁ、切り落とすのは、俺だけ。本体には何の外傷も無い。とは言えど、今回の本体はこっちにあるからな。いちいち切る必要は無さそうだな」
元「それは?」
??「アイツらが閉じ込められた『箱』をコピーしたもの。お前が持ってるんだろ?『テオス』」
テオス「正解だ。あれには驚いたが、学習してしまえば、問題無い」
??「そうか。」
光線が出る
砕く
粉々に
元「アイツら学習したんじゃないのか?」
??「まぁ…確かに。本体には通じない手だが、アイツらは、偽物。だから、本物の火力をコピーしたら、アイツらは、絶対に勝つ事ができない。そもそも、偽物が本物に敵対しないのは、『勝てないと分かっているから』ならば、それをパクれば、いいってだけの話だ」
元「そうなの…か」
その時、
文字通りの黒い煤になった腕を見た