雑草に転生する前の事だ。
キキ———!!!
夜中なのに人通りが多い交差点で急ブレーキの音が鳴り響く。
「おい! しっかりしろ! おい!!」
そんな声が聞こえた。
え?
目の前は赤黒い液体が流れている。鉄の匂いもする。
…血?
ああ、そうだ……
俺はトラックに撥ねられたんだった。
……熱い。
ああ、俺、死ぬんだ……
何故か腑に落ちる。認めたくないのに。
やべ、感覚がなくなってきた。
鉄臭い血の匂いが遠のく。
『もしかしたら助かるかも』という希望ももう持てない。
手遅れだ。
こんな時に考えることじゃないが、俺はラノベが好きだ。
その中でも主人公が無双する系が好きだ。
ラノベの主人公に生まれ変わりたい。
けど、ハーレムを築く主人公にはなりたくないな。色々と面倒くさそうだし。
来世はラノベの主人公みたいに俺TUEEEしたい。
生まれ変わるとしたら今の俺の記憶は消えるだろう。
前世の知識は少しくらい残して転生させてもらいたいな。
転生先はもちろん、剣と魔法の世界だ。
恐怖耐性とか、外道耐性とか、そのへんのスキルとかもお願いしたいな。
異世界転生してワックワックしながら魔物討伐しに行って恐怖で動けなくなるとかで死んだりさ、魔物の死骸を見たことにより口から虹を大量生産したりするのは嫌だからね。
こちとら平和な世界で生きてるんだから。
そういうの見たらねぇ。大量の虹、涙、etc…
要するに精神崩壊の危機に迫ってくるよね。
引き籠もるわ。
もし、神様が存在していたら、この願い、聞き届けてくれたらいいな。
俺は目を閉じる。
さようなら、今世の俺の記憶と体。
と、まあ。死ぬ覚悟を俺なりにしたんだけどさ。
ま、たしかに死んだけどさ。
神様が本当にいるとは思わなくね!?
《え、今現在進行系で目の前にいるけど。》
あ、聞こえてんのね。
《全部聞こえてるよー? でさ、ボクは君の願いを叶えてみようと思うんだ。どう? 互いにいい条件でしょ?》
神様が言っていることはこうだ。
俺の願いを叶えてくれる⇔こいつの頼みを実行する
まあ、いいんじゃないか?
《じゃ、決定で。願いを追加したい場合は今のうちにねー》
じゃあ、確認を兼ねて欲しい能力とか言うわ。
まず第一、これは絶対。
俺TUEEEしたい。
ということで最強種族に転生させて。
恐怖耐性とか外道耐性とかそのへんの能力。できれば無効であって欲しいな。
もし人間じゃない場合は、最強になった時に人の姿になることができる能力を。
もちろん能力値は変わらずに。
《あれ、最初からじゃなくて?》
ああ、うーん…… 察してくれ。
《え。》
限界突破的な……際限なく進化できる能力とか。
あと、死ににくくしてくれ。
死んだら終わりだろ?
《そだね》
忘れちゃいけねぇ。
剣と魔法の世界に転生を。
魔法も使いたいし。
あと、ハーレムは無効で。
《えっ》
以上。後は任せた。
《よし、任された。で、最後はボクの頼みを聞いてくれ。》
うん。
《ボクの親友、邪神カイトに殴り込みに行ってくれ。》
シリアス(?)な空間が一気に変わった。
わ、わかった。あんたの名前は?
《邪神ルカ。よろしくねー》
まさかの邪神。
創造神かと思ってた。
《あ、ちゃんと創造神の許可もらってるよー?》
ちょっと安心。
《たまに神託をするって言ってたよー そろそろ転生させるよー》
《あ、言い忘れてた。教会に行ったらボク達神に会えるよー》
《じゃーねー》
こうして俺は転生したのだった。