1000文字で隕石が降ってくる世界線 ~君を好きな僕はここにいてはいけない~
「これを見ているということは、僕は死んでいるだろう。嫌なことも辛いこともあったが、それなりに楽しい人生だったと思う。特に親友の一葉には返しきれない恩がある。こんな形でしか君に感謝を告げられないのは残念だが、来世で……」
「ちょっと待てやオイ」
そう言って僕の方を掴んだのは唯一僕の味方であった一葉だ。
女子高生である彼女は紺色の制服に身を包み、未だ抜けきらない幼さを薄いメイクで隠している。
「一体どうしたと言うんだ。まだメッセージの途中なんだから静かにしていてくれよ」
「どうしたもこうしたもないわよ。ロープを持ってきたと思ったら、私の部屋で遺言を録り始めたんだから止めるに決まってるじゃない」
「おお、確かにそれはそうだ。もしかしたら君のことだし、ワンチャンスルーしてくれるかもと思っていたが、どうやら失敗したみたいだ」
「あんた1回ぶん殴られなきゃわかんない?とりあえず座りなさいよ」
彼女の握る手に力が込められたのを確認すると、座りながら僕は頭を隠す仕草をして彼女の怒りが収まるのを待つことにした。
その姿に呆れたのか、一葉はため息を吐いて力を緩める。僕の勝ちだ。
「……で?一体なんでこんなことしたのよ。これだって、録った後に使う気だったんでしょ?」
彼女の手に持っているのは2m程の太めのロープだ。強度が高いと店員におすすめされたポリエステルのものを買った。
「そうだな。大きな理由のひとつとして、君と付き合いたいからさ」
「……はぁ!?あんた何言ってんのよ!そのためだけに死のうとしたってこと!?」
「そうだ。君と付き合うのに今の僕はあまりにも向いてない。ならば来世に期待するのだって何らおかしいことじゃないだろう?」
「おかしいに決まってるじゃない!だって……あんた……」
一葉はそれ以上を口にするのをやめた。
それは僕を否定しないためか、それとも彼女が何かを感じたのか、僕には分からない。
「君は何も言わなくていいよ。だってこれは、僕のわがままだもん」
そう言って僕は立ち上がり、スカートの汚れを払った。
カーディガンを羽織って外へ出ようとする。
「それじゃあ僕は帰るよ。明日からも友達で……」
「待って!結菜!」
不意に背後から抱きしめられる。
その瞬間! 飛来した巨大隕石が地球に激突!
女の子に告白されて戸惑っていた一葉も、ボクっ娘で一葉のことを好きだった結菜も、地球上の全生命体がこの時の爆発で死んでしまった!
~TheEND~
人気が出たら俺が隕石の衝突を頑張って食い止めます。