君を手に入れるためのカウントダウン
『この世に時間なんて物はないのさ、人が作った物差しだからね。
小さな分子が動いた軌跡を上書きしてきた今があるだけ。それでも人は架空の線を紙に引き、くるくる巻けば時間が元に戻るんだって信じて疑わないんだよ。
時間に囚われたがるのは本能なのかもしれないね。僕も、そして、君もさ』
十数えるだけ時間をちょうだい?
九個の星で星座を描くから。
八方から吹く風に乗り、
七色の綾で世界を染めるの。
六大陸を海に浮かべて、
五本の橋で繋いでいくんだ。
四季の衣を着せ替えて、
三刻みの日を繰り返す。
二進法が織りなす世界を、
全部君にプレゼントするよ。
一人だけ。
僕が欲しいのは一人だけ。
君の全てを下さいな。
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それぞれの数字に世界の要素を当てて、カウントダウン風に仕立てた作品だね。
最初に書いたのは、持論。この世界に時間というものは存在しないって考え方。わたしたちは物質が動き続けた『今』を、上書きし続けているだけで、時間という一方通行のレールの上を進んでいるわけじゃ無いんだ。タイムマシンが存在しないのは、そもそも、過去や未来の世界が存在していないから。
宇宙の全ての動きが一時的に止まったら、時間だけが進むだろうか? 宇宙規模で全てが止まった世界に時間は存在しない。逆に時計の針が止まろうとも、世界が動き続けていれば今は更新されていくんだ。
タイムマシンのように任意の時代に行きたいのであれば、その時代の世界を分子レベルで再現して、その時代を『今』に変えるほかない。逆に、それが出来るのであれば、タイムマシンに等しい。
そんな考え方だね。