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第一村人発見!と思いきや・・・

森の切れ目に歩き出したユーリは、唖然としていた。森を抜け出して見えた光景は、辺り一面草原だったのだ。北の方にうっすらと山が見えるが、見える限りでは集落などはなく、街のマの字も見えない。


「ははは、まだ苦難は続きそうだな。」


背中に背負った革袋にはキノコや野草などはまだ残ってはいるが、この世界に来てまだ二食しか食べていないのでお腹が空いてるのだ。このまま何もなければ飢えてしまう。


「さて、どうするか・・・森に採取にしに行くのもモンスターがいるだろうし、草原を突っ切って歩いたとしても何もなければ飢えて死んでしまうだろう。」


暫く悩んでいただろうか、草原にガサガサと音がして辺り一面に広がる草原の一部、膝下くらいまである叢が揺れた。


「ムッ!何かいるな・・・。」


すると可愛いらしい顔が、ピョコっと顔を出し鼻をヒクヒクさせている。


「おお!ウサギか!?でも額に角があるな、モンスターか?」


暫く身を伏せ眺めていると、警戒したのかピョンピョン跳ねながら何処かへ走り去ってしまった。

その間にユーリは何もしていなかった訳ではない、ウサギを凝視し鑑定していたのだ。


-------------------------------------


【種族】 ホーンラビット

【年齢】 1才

【レベル】 1

【体力】 22

【魔力】  9

【腕力】 15

【頑強】 12

【俊敏】 30

【技術】 穴掘り たいあたり

【魔術】 なし


-------------------------------------


「フム、鑑定で見る限り弱そうだな。森のゴブリンを相手にするよりは、まだマシであろうか。ホーンラビットのスキルを見る限り毒もなさそうだし食料になりそうか・・・ヨシッ!このまま草原を、ホーンラビットを狩りながら横断してみよう。」


草原を横断すると決めたユーリは近くの小川で朝食にすることにした。

暫く魚と格闘し一匹なんとかゲットしたものの、木の槍を損傷してしまったので薪代わりに。それだけでは足りないので、その辺に転がってる枝や枯れ葉を集め石で囲い【ファイア】で火をつける。

火が付いたのを見届け、今度は魚の内臓処理をしていく。

昨日はスープに入れたが、その辺にあった木の枝を鉈で串を作って魚の口から刺していく。串刺しにした魚を焚火へと持っていき遠火でジックリと焼いていく。


「塩はないが、焼くだけでも良いだろう。」


手際よくキノコのスープも作り、食していく。


「焼き魚とキノコスープの味の感想は食べることはできる。とだけ言っておこう。腹に入ればなにも変わらないさ。」


小川の行く先を見てみると北に見える山の方へ流れて行ってる。

水源からは離れがたいが、山の方には何もないのでこのまま西を目指すことにした。

生活魔法の【ウォーター】があれば水の心配もないだろう。


準備を整え、再びユーリは西へ人里を求め歩き出すのであった。



暫く歩くと先程見た個体とは別であろう、ホーンラビットを発見した!この辺りは、このウサギのモンスターが繁殖しているのだろう。

ユーリは素早くその場に身を伏せ、音をたてないように近づいていく。


近くに転がっていた投げやすそうな石ころを発見したのでそれを手に掴み、狙いを定める。


シュッ!!


と風切りの音を出し石が投げだされた。だが案の定あたる事はなかった。スキルを持っていない素人なのだ、ホーンラビットの近くの地面にめり込み土や草がが舞う!それにビックリしたのか、ジャンプをして回避したホーンラビットにユーリは肉薄した。

ゴブリンと対峙したときに比べ、ユーリは冷静だった。声を上げることもなく、瞬時に近づき鉈で首を一刀の元切り裂いた。

ホーンラビットは中型犬くらいの大きさと角が生えていること以外見た目はウサギと変わらなかった。


「ふぅ・・・ちょっと可哀そうだが解体してしまおう。」


ユーリは動物の解体はしたことはなかったが、猪や鹿などの猟をしているネットの動画で見たことがあった。素人ながらも毛皮を剥ぎ、腹を裂いて内臓を処理していく。


「鉈の切れ味が良くて助かったぜ。だが魚に比べたら内臓とか結構くるものがあるな・・・。」



命に感謝を捧げ、解体した肉を毛皮に包み革袋に入れる。

ユーリはかなり歩いたはずだがレベルアップのおかげか疲れを見せずに、草原を再び歩き出した。




あれから四時間近く歩いた頃だろうか、太陽は真上に日が昇り丁度昼頃だろう。

遠くから見ると延々続く草原だったはずだが、草で隠れて見えていなかったのか馬車の轍と人の足で踏み固められたであろう田舎道が北の方と南の方へ続いていた。



「やったぞ!道だ!やっと人の痕跡を見つけたぞ!!これは車輪の跡だ、間違いなく人が通っている!」


ユーリのテンションが爆上がりして、暫く一人で騒いでいたが、腹の虫が「ぐぎゅるるる~」と鳴きだし我に返った。


「飯にしたいところだが、薪になるものが辺りにはないしなぁ。森で拾っておくべきだったか・・・。ここで立ち止まっていても仕方ない、先に進もう。」


「南か北か・・・どちらに行くべきか。」


と悩みながら、ふと北へ続く道を見たところ小さな点と土埃があがっているのが見えた。


「あれは・・・馬車か?ん?何かおかしいぞ。」


馬車が猛烈な勢いで走っているのが見えた。

何かに追われているのだろうか、土埃をあげ馬車と馬に乗った護衛だろうか?何かから逃げるように走っている。ユーリは危険を感じ、とりあえず傍の草原に身を伏せ観察する事にした。


馬車に乗っているのは、貴族か商人だろうか?馬車はしっかりとした作りのようで、気品も感じさせる作りだった。護衛の恰好を見るに商人か?護衛の人は革鎧を着て剣や弓を持っている、ゲームや小説などでみる所謂、冒険者って感じだな。



さて、どうするか。馬車を追っているのは恐らく盗賊だな、薄汚れた格好をした六人の男達が前の馬車に剣や手に持った武器を馬に乗りながら振り回して圧力をかけ怒鳴り散らしている。


「やっと人に出会えたのに、こんなテンプレ場面に出くわすとは・・・。」


そう愚痴をこぼしてる間に、事態は悪い方に動いた。

ユーリが伏せて隠れている場所の近くを通り過ぎるタイミングで盗賊の一人が弓で馬車の馬に矢を射ったのだ。馬が鳴き声をあげながら暴れ馬車が道をそれてユーリの近くの草原の方に横転してしまった。


「ヤバイな・・・どうする?このまま伏せてやり過ごそうと思っていたのに・・・。」


護衛の数は四人だけしかいないが、飛び降りるように下馬して剣を抜き放ち盗賊達に応戦する構えを見せた。


「あの人数差で、大丈夫だろうか?やばくないか?」


すると盗賊の頭目なのだろう、斧を持った大柄な男が叫んだ。


「野郎ども!やっちまえ!!女は生け捕りだぞ!!」


「へい!お頭!」


と盗賊達のやり取りがあり、戦闘が開始された。


「この状況で俺は、どうすりゃいいんだよ!?名乗り出て加勢するか?」


ユーリは草原で伏せているため、此方には誰も気づいてはいない。暫く戦闘を眺めていると、護衛の方が強いのか防戦するだけだが善戦していた。


「あの魔法使いっぽいのが盗賊達の要だな。奇襲して奴を俺が倒せば場がひっくり返るだろうか・・・。」


そう考えてる間に護衛の一人が魔法使いっぽい盗賊の炎の玉をくらって、場がいっきに動いてしまった。


「ヤバイぞ、考えてる暇はない。俺が出なければ全滅してしまう!」


ユーリは死角に入る為に匍匐前進の要領で魔法使いの背後に回った。

クラウチングスタートの様な構えをとり、いっきに加速し魔法使いに肉薄した!


心臓は鼓動を速め 足は加速し 視覚が狭まる。


魔法使いはブツブツと呪文を詠唱していたが、走る砂利の音で気づいたのか反応し振り返った。


そんなの関係ねぇ!とばかりにジャンプと同時に脳天目掛け鉈を振り下ろした。見事と言わざる負えないほどの横やりであった。鉈は頭蓋を割り頭の半場までメリ込み、眼球は飛び出ている。

頭から血が噴き出し、ユーリの体に降りかかる。

魔法使いは悲鳴を上げる隙も無かったのか、その場にドサリと倒れ伏した。





【同種族を殺害しました】





【称号、異次元を渡る者の効果によりスキルを一部開放します】





【成功しました】





【これ以降監視に移ります】





ブツッっと何かが切れる音と共にユーリの意識が現実に戻った。


「今何かを考えてる暇はない!!」


魔法使いの亡骸を飛び越え、弓持ちの盗賊に強襲した。

弓持ちの盗賊は弓を捨て短剣に持ち替えた、ユーリに応戦するようだ。

一時の間睨み合いが生じ、斧持ちの頭目らしき男が叫んだ。


「てめぇら!なにチンタラしてやがる!サッサと殺せぇ!!」


短剣持ちになった盗賊が頭目に怯みながらも、気合の声と共にユーリに斬りかかってきた。


「クソがぁーー死ねぇーーーー!!」


ユーリは何とか鉈で短剣を受け、鍔迫り合いに持ち込む。だが一瞬の隙を突かれ盗賊の蹴りがユーリの腹に命中し吹き飛ばされた。


「グハッ!この野郎!!」


そう罵りながら盗賊を見ると、盗賊は既にユーリに肉薄していた。

ユーリは何とか袈裟斬り振るわれた剣を薄皮一枚を犠牲に避け、反撃に出た。


【ファイア】


ユーリの生活魔法のファイアが左手から燃え広がり、盗賊の顔面を襲う。ユーリは盗賊が怯んだ隙に磨き抜かれた鉈を首筋に滑らせた。その瞬間、血が噴き上がり「かぺぺぺ」と言葉にならない声を上げながら盗賊はその場に倒れこんだ。


ユーリは止めていた息を大きく深呼吸しながら馬車の方を見る。


残る盗賊は頭目のみで、護衛の二名は殺されてしまったのか、地に伏している。


生き残った護衛の男女二人と盗賊一人の状況だ護衛が勝つであろう。暫く眺めていると生き残った男の護衛が頭目らしき男の首を撥ねた。



悲惨な状況だが、これで盗賊騒動は終結したようだ。



ユーリはもう一度大きく深呼吸してゆっくり馬車の方へ向かうのだった。





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