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迷いの森から先へ

 迷いの森~猟師小屋~


チュン!チュンチュン!


朝・・・か・・・寝ぼけ目を擦り、伸びをして起き上がる。


寝てる間になんか厄介なことがあるかと思ったが何もなかったな。


まぁ何かあっても困るんだが。


「よし!今日は川があるか探索しよう。そのついでに錆びた鉈を研ぐのに砥石になる石と朝食を探さないと、飢えて死んでしまうな!」


外に出ると今日の天気は晴れ。少し霧が出てるが、探索には支障はないだろう。

ユーリは【ウォーター】で口を濯ぎ生木の枝で歯を磨く。


「おえっ!にっが!くそう、歯ブラシが欲しい・・・。」


ユーリの服装はスウェットで動きやすいが、昨日の森歩きから裸足だ。昨日は恐怖と焦りからあまり気にしてはいなかったが、あちこち傷が出来ていた。


「昨日、発見した革袋で靴でも作るか。」


【ウォーター】で足を綺麗にして、小屋に戻る。


二枚あった革袋の内一枚を半分に裂き、端っこに穴を4つ木の枝で開け、小屋にあった紐で穴に通して靴の代わりにした。足を包み込むように履く感じだ。


もう一枚の革袋はロープで背中に背負えるように作った。


「よし、準備はこんなもんか?」


靴を履き 鞘ベルトをして鉈を差し マントを被り 革袋を背負う


「今日はどっち方面に行こうか、昨日は沈む太陽を追いかけて進んで小屋を見つけたから、多分西の方へ来ているはずだ。小屋を中心に考えて、東は選択肢から外して今日は南にでも行ってみるか?地形も結構分かるようになるしな。南に行って川がなければ戻ってくるか。」


そんな事をブツブツ呟きながら小屋から外に出て太陽の位置を確認する。


「よし、あっちが南だな!今日も気張って歩きますか・・・。」







森を警戒しながら進んでいると、この森は豊かなのか昨日も拾ったキノコや野草、他にも木の実や日本で見る山菜っぽいのが良く目についた。素人ながら鑑定を生かし食料になるであろう物を手に入れていく。そんな感じで進んでいると、ある疑問が浮かんだ。


「昨日から思っていたがモンスターはいないのだろうか?」


それがフラグになったのか、ガサガサっと森に音が響いた。


ユーリは足を止め音のした方を見た。

そこには腰に毛皮を纏って棒を振り回す、小柄で醜悪な顔のした薄緑色の人型がいた。


「あれは!ご、ゴブリンってやつか?多分そうだなゲームに出てくるゴブリンにそっくりだ。」


それを見たはユーリは考える。このまま息を潜めてやり過ごすか、奇襲をかけて鉈で強襲するか・・・。


悩んだのは数秒で、すぐに決断した。


「まぁ、やるしかねぇわな。このままモンスターから逃げながら森を抜けるのは無理だろうし、ここで隠れても、これからも奴と出くわさない保証はない、危険は減らすべきだ。」


ユーリの心臓はバクバクと鼓動を速める、動いていないのに緊張で息も上がる。


「これが戦うってことか、足が震えたままでやれるだろうか・・・。」


ユーリは一度深呼吸をして覚悟を決めた!足音を殺しゴブリンにすり寄ってゆく、残り10メートルくらいだ、ゴブリンはグギャだのゲギャだと独り言して草を棒で薙ぎ払っている。警戒心がないのかまるでこちらに気づいていない。


ユーリは鉈を鞘から抜き、気合の雄叫びと共にゴブリンに肉薄した。


「うぅおおおおおおおおおおお!!!!!!!」


ゴブリンはその雄叫びでビックリしたのか一瞬硬直した。


ユーリはゴブリンが振り返ると同時に距離1メートル付近で跳躍、空中で体を捻る。


体を捻った勢いを乗せ、鉈を右肩から斜めにゴブリンの胴に振り下ろした。


ザシュ!


「ゲギャーーー!」


ユーリが着地した瞬間、ゴブリンの断末魔と血が舞う。


ゴブリンは何もできずに倒れ伏したのだった。




ピコン!




【初めてモンスターを倒しました】





【レベルアップします】




【これ以降監視に移ります】


ファッ!!


ユーリの頭の中で電子音が響き、女の声が聞こえた。


「レベルアップだと!?スキルやら魔法だの、益々ゲームじみてきたな。」


ユーリはゴブリン倒した事で興奮はしていたが、吐き気もなく冷静だった。そしてレベルアップした事で何が変わったのか確かめるために、自分に鑑定をかけた。


「鑑定!」


-------------------------------------

【名前】 ユーリ・アンドゥー

【年齢】 30歳

【称号】 異次元を渡る者

【レベル】 0→2

【体力】 80→90

【魔力】 90→99

【腕力】 60→66

【頑強】 50→54

【俊敏】 45→55

【技術】 イングドラシル共通言語 鍛冶 鑑定 短剣new

【魔術】 生活魔法


-------------------------------------


ほう、今ので2レベル上がったのか。短剣スキルが新しくついてるな、鉈を使って倒したからか?いまいち分からないが、何はともあれレベルがあるって事はモンスターを倒せば倒すほど強くなれるって事だ。この世界は俺に向いてるのかもしれない。生きてるって実感できる事が、どれほど素晴らしい事か。死がいつも隣にある緊張感、たまらんな。


「鉈は大丈夫だろうか・・・錆びてはいるが刃こぼれはしていないな。なかなか良い鉄を使った鉈のようだ、研ぎ直したら切れ味も益々良くなるだろう。」


ユーリは鉈を鞘に差し、再び探索を再開した。







2時間程歩くとサラサラと小川が流れているのが見えてきた。

その間にゴブリンと二度程遭遇したが、どちらもハグレの一匹だったので難なく倒すことが出来た。


「おお!こっちに来て正解だったなぁ、だがサクサク事が進んでなんだか恐いぜ。」


小川に着く前に辺りを入念に調べモンスターの姿がないか確認した。


危険が無い事の確認を終えて小川に近づくと、小石など砥石にも使えそうな石がかなり豊富にあった。水面は透き通るように綺麗で魚も多く棲んでるようだ、水もこのまま飲めそうだったので、手で掬い一口飲んでみると冷たくかなり美味しかった、歩き通しだったので生き返るようだった。


「この辺りで飯にするか、朝食って言うより昼飯になりそうな時間だが。」


ユーリは魚が食べたくなったので、銛にできそうな硬い棒を探す。


辺りを散策し薪と丁度いい長めの棒が見つかったのだが、鉈で棒の先を加工するのにまずは先に錆びを落とそうと、小川に行って砥石になりそうな良さげな平たい石を探す。


「この石なんか砥石に丁度いいんじゃないか?」


近くの木の傍に鍋に入れた水と、砥石代わりの石を置き、腰掛ける。

鍋から水を掬い石にかけ鉈を取り出す。


ユーリは、まず表面から研ぎだした。






夢中で研いでいるとかなり時間が経ってしまった・・・。


まだまだ磨き足りないが、先程拾った長めの棒の先を鉈で尖らせていく。

棒の長さは地面から肩くらい、自分の身長が170チョイなので150センチくらいだろうか?


「銛と言うより、木の槍ってかんじだな。」


暫く突く練習をして、いざ魚を捕るために小川へ。


サラサラサラ


「狙いを定めて・・・。」


スカッ


「難しいな・・・コラ!逃げるな!」


バシャバシャ


それから何度となく挑戦して、なんとか1匹突くことが出来た。

よし、これから朝食だ!ってことなんだけど、もうそろそろ日が暮れそうだ・・・。

これは間違いなく野宿になりそうだ。猟師小屋に帰るには時間が足りない。


「朝食が夕食になりそうだが、まぁこればかりは仕方がない。準備しよう。」


安全そうな辺りが見渡せる場所へ移動し、薪に生活魔法の【ファイア】で火をつける、鍋を吊るせるように木の枝で加工し小川で鍋に水を入れ煮沸させる、道中で拾ったキノコで出汁をとり、その間に木の槍でとった魚の内臓を取っておく、因みに毒がないかは鑑定済みだ。


鍋に魚と野草などを入れ暫く煮込む。


「暗くなってきたな、夜は危険そうだ。そろそろ鍋の具合もいいだろう。」


「食べよう。いただきま~す。」


「ふぅー!ふぅー!ハグハグ、うーんやっぱりちょっと薄いな、まだ魚が入ってるから昨日よりは美味しいが早く街に行ってまともな物が食べたいなぁ。」


「ふぅーご馳走様でした!っと、なんだか独り言が悲しいな・・・。」


鍋などを洗い、薪を夜通し分を拾ってジッと焚火の近くの木に寄り掛かった、遠くで狼かまだ見ぬモンスターの遠吠えが聞こえる、これじゃあ、寝れないかもしれないな・・・。鉈を取り出し磨き残しを砥石で丁寧に研いでいく。


「大分綺麗に研げてきたな。」


鉄工所では鉈など武器を作ったり、研いだりはしない、精々グラインダーで鉄板を磨いたりするぐらいだ、趣味でコッソリ自分用のナイフを作ってみたり、家で刀の作り方をネット動画で見るくらいだ。鉄工所の仕事は好きではなかったが、鍛冶の知識に生かせる仕事は結構あった。この世界ではアーク溶接など機械で加工することができないだろうから、どれだけ自分の鍛冶スキルを活かせるのかかなりワクワクしているところだ。


「街に着いたら、鍛冶屋さんに弟子入りするのも悪くないかもな・・・。」


鉈を綺麗に研ぎ終わり、夜の闇が深くなったころユーリは木にもたれかかり、ウトウトしていた。






遠くで聞こえた遠吠えが近くなってきている。





薪がパチパチと弾けている、その中の大きな薪がパチチっと大きく弾けたその瞬間にユーリの意識が覚醒した。




『ワオォーーーン!!』




「ムッ!近いな、これは不味いかも知れない。」


ユーリは急いで起き上がり、辺りを確認して木の木陰に身を寄せる・・・ユーリは悩んでいた、このまま焚火を大きくし迎え撃つか、焚火を消し遠吠えが聞こえる逆に逃げるかだ。


「普通の狼ならば、レベルの上がった自分なら対処できるかもしれない、だが此処は異世界だ普通の狼ではない可能性の方が高い。」


そう考えたユーリは上着を木にかけ、焚火を消して小川に飛び込んだ!匂いを落とすためだ、水から上がると遠吠えが聞こえる逆に走り出した。







どれくらい走っただろうか、日が昇り始め徐々に明るくなってきた頃、ユーリは息も絶え絶えに、近くの木に寄り掛かった。


「ハァ・・ハァ・・ハァ・・・。」


息が落ち着いた頃に、ユーリはもたげていた頭を起こした、すると森の切れ目が見えた。


「も、森から出れるぞ・・ハァ・・ハァ・・・ハハハハハハハハハハッ!!やったぞ!森から出れる!!」



ユーリはゆっくりと森の終わりの切れ目へ歩き出した。



その先に何があるのか、ユーリに希望はあるのかそれは作者もまだ考えていない、というより、行き当たりばったりだ。まだ作者もこの先に何があるのかは分からない。


見てくれてありがとうございます、これからもよろしくお願いします。




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