(5)ダメなのに…
~メニールSide~
__《私》は、ただの生産機。
__宝石を、つくるだけしか能のない機械。
__醜い醜い、お人形。
__《私》は、人間を偽った《もの》。
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「メニー。あなたは宝石を言う通りにつくれば良いの。沢山、沢山…。」
母は、私にそう言いながら宝石をつくらせていた。私は、母を母と呼ぶことを許されなかった。「奥様。」と、呼ばなければいけなかった。
父は、何も言わない。母の行動を何もかも見て見ぬふり。
この国では、5歳づつ年をとる度に施設に行って宝石のつくれる範囲を測る。幼い頃、私もそれに行った記憶がある。
私の番になると、辺りがシン…となったことを覚えている。
魔法陣に触れると、沢山の様々な宝石が私の手から出てきた。
家に帰ると、母は高笑いして喜んでいたことを幼心から恐いと思った。
「メニー。沢山つくりなさい。」
「はい…。」
母は私に宝石をつくることを強制した。何故か私は宝石をつくることに苦がなかったので、何も疑問を持たずに沢山、沢山つくり続けた。
_学園に入る年頃になると、母は私を蔑み始めた。
「汚い灰色の瞳、醜い髪。誰にも似ず、お前は不幸の固まりよ。」
私は、ヴェールを被ることを強制された。
何を見ても、薄い布越し。いつからか、色が分からなくなっていた。けれど、一つだけ色が見えるものがあった。
__『宝石』だ。
そのおかげで、私は宝石をつくって分別する事ができた。なので、母は私が色が分からないことを知らない。
学園に入ると、成績のこともあって周りから避けられていた。
ある日ことだった。
「ねぇ、クリスタルさん。いつも一人だけど、友達いないの?」
「こらっ!直球すぎますわよ。…クリスタルさん、私達とお昼一緒に食べませんこと?」
それが、フリームとベリーとの出会い。
「私、お弁当なのですけれど…。」
「なら中庭で食べようか。」
「良いですわね。」
こうして、段々と仲良くなった二人の友人達。
二人は、私の隠し事を追求しない。私の顔色が悪いと心配もしてくれる。
「私達は従姉妹同士なの。」
「だからか、髪型と色を変えると見分けがつかないみたいなんですわ。」
ある日、フリームとベリーは同じ髪型で私の元へやってきた。私には、どちらがフリームなのかベリーなのかが分からない。だって、私は色が見えないから_。
「あ、授業がもうすぐ始まるわ。」
「急いで行かないと。行きましょう、ベリー。」
「「……え…?」」
私が向いた方向には、フリームがいたらしい。二人は驚きに目を見開いている。
あぁ、嫌われてしまうんだろうか。せっかくできた友人だったのに。これが、最初で最後の友人になるのだろうか。
「メニール、正直に言ってくださる?」
「色が、見えないの?」
「…うん。黙っててごめんなさい。気味が悪いわよね。」
「「……っ!そんなことない(ですわよ)!!」」
「メニール、何故黙っていたの。」
「そうですわ!私達、友達でしょう?!」
そう言って、それから二人は私が色彩を取り戻せるように、沢山のことをしてくれた。
宝石の色は判断できたから、私は宝石を見ればなんとか色が見えるようになった。今では、生活に支障ないぐらいに回復した。
「私達は、ずっと友達だよ!」
「そうですわ。大人になっても、年をとっても、私達の仲は永遠に崩れませんわ!」
「_フリーム、ベリー、ありがとう。」
私の世界は、いつも薄い布越しだ。
けれど、前とは違う。
だって、私の周りには大好きで大切な友達がいるから。
私は『メニール』。沢山という意味だけじゃない。私は、私。
いつだって、二人がいてくれる。
__そんな日常に、翡翠は一滴の『変わる』ということを落としてくる。
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「誰がそんなことを言った?」
「っえ…。」
翡翠の視線は、こちらを見て離さない。真っ直ぐな、瞳。
こんな時にだが、とても綺麗な『色』だと思った。
「あなたは、とても綺麗だ。醜いなんて言ったらダメ。だから…」
「だから、見せて…?」
読んでいただき、ありがとうございます。