表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/25

(2)断るはずだったのに…

「男なんて、大っっっっっ嫌いっ。」


 そう、メニールは〈大〉の男嫌いであった。

 だから、目の前に男がいるだけで…


 「っ!」

 「……(想像しただけで固まるなんて)。」

 「……(大袈裟ですわ)。」


 フリームとベリーがそう思った時だった。


 「お願いいたしますっ!!!」

 「嫌です。他を当たって下さい。」

 「そんなっ!?せめて、願いだけでも聞い…」

 「聞きたくありません。」


 メニールの、拒絶するような声に驚いた二人は、メニールの影に隠れて見えない何かをひょいと見た。


 「!おや、土下座か。」

 「いい絵になりますわね。イケメンがそれをすると。」


 ベリーが言ったように、見め麗しい男は土下座をしてメニールの順路を塞いでいた。


 「これはマジだな…とりあえず、移動してから話したら?」

 「ノートは、二人分ですわね。写しておきますから、ごゆっくりどうぞ。」

 「ありがとうございますっ!」

 「…裏切り者…」


 メニールの目もマジだった__。


ーーーーーーーーーーーー


 「…で?迅速かつ具体的に、不快感のないように話して下さい。」


 不機嫌丸出しのメニールにビクビクしながら、男は口を開いた。


 「僕の名前は……翡翠ひすい…と、言います。」

 「私の話、聞いていましたか?」


 まだ名前を言っただけで、翡翠は睨まれてしまった。


 「もっと、ハキハキ話しなさい。不快です。あと、敬語は必要ありません。私もそれで話します。」

 「う、うん。ありがとう。」

 「…先程の土下座に精神力を使いすぎよ。そうね…この時間中に700文字以内で用件をまとめてくださる?」

 「うん。わかった。」


 さいわいにも、ここは文学を学ぶための教室。原稿用紙なら、腐るほどある。

 原稿用紙を、いくつもある棚の中の一つから取り出し、机の上に置く。一枚350文字の原稿用紙だ。


 「…すごい、ね。」

 「700文字以内だから、全て埋める必要はなくてよ。」

 「えっ…!?ち、違うよ。」


 翡翠が言うには、メニールが迷いなく棚を選んだことに驚いたらしい。


 「それに、優しいし。」

 「どこに接続語を使っていますの?…保健室に行くことをお勧めいたしますわ。」

 「だって、『10文字以内でまとめろ』とか言われると身構えていたのに、700文字以内だなんて予想外で…優しいな、って。」


 その言葉に、メニールは顔をしかめた。翡翠もその顔を見て、明らかにメニールを不快にさせたと青ざめる。


 すぐさま謝るために席を立つ翡翠に、メニールは手を差し出して止めさせた。


 「…自身にできないことを強制させるほど、非情ではないわ。」


 それは、拗ねているようにも見える。メニールだって、外の顔ぐらいはいくらでもあるが、中身は一つしかない。

 性格まで冷徹で冷めているなんて、思われたくない。


 「ご、ごめん……。」


 察した翡翠は、すぐに謝罪した。しかし、メニールは顔を俯かせてしまう。勿論、怒っているわけない。


 「本っっ当に、ごめん!君には不快な思いしか、させていない僕の話しを少しでも聞こうとしてくれているのにっ!」

 「…別に、不快には感じないわ。あなたの言葉には、馬鹿にしている要素がないもの。」


 メニールをさげすむ人は、たくさんいる。

 理由は様々だったが、陰口などは当たり前であった。

 幼い頃は、そんなことにいちいち傷ついてもいたが、メニールは気付いた。メニールが顔を俯かせるたびに、陰口を言う人々はにやにやと、まるで誇るかのように顔を歪ませるのだ。


 (この人は、そんな顔もそぶりも見えない。)


 純粋じゅんすいに、思ったことを言っていただけだった。


 「書き終わりましたでしょう?。見せてくださる?」


 半ば奪う形で、原稿用紙を受け取る。翡翠の字は男らしく、見た目に見合わない。……風に吹かれたら、倒れそうなぐらい弱々しい身体付きのくせに、繊細な字を書くと思ったら違った。


 「…あなたのお願いは、わかったわ。」

 「っ!なら!」


 翡翠が目を輝かせたのを、メニールは見逃さなかったが、無視して話しを進める。


 「時間、ですわ。」


 そう言うと、席を立ったメニールは見てしまった。


 「っ!・・・・・。」


 一気に落胆した、捨てられた子猫のような翡翠を。


 ここで大事なのが、“子猫のような”だ。

 子犬は、縋るようにこちらを見るが、子猫は違う。

 子猫は、他人に媚びることはせず信頼した者にしか弱い所を見せない。


 何が言いたいかというと、つまりは“手を差し出さずにはいられない”ということだ。


 「………明日の昼食で、またお話ししましょう?」

 「っ…はい!」


 …ちなみに、メニールは翡翠という名の小動物の目線に勝てるほど(ほとんどが勝てない)心は強くなかった__。

ゆっくりな最新になります…。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ