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(1)日常になるはずだったのに…

この世界には、宝石をつくりだす力を持つ者が数多くいる。

その者達からつくりだされる宝石は様々で、得に大きく価値の高い物をつくりだす者は、『価値者(かちしゃ)』または『勝知者(かちしゃ)』と呼ばれている。

そんな力は、親から子へ。子から孫へ__受け継がれる…はずだった。

――――――――――――


王都(おうと)金剛石(ダイヤモンド)唯一の宝石学校。別名:クリスタルパレス。

 宝石学校は、宝石をつくる者_特に『価値者』を重宝している。もちろん一般生徒もいるが、階級付けがある。

下から、『一般生徒』『宝石をつくれる生徒』『宝石を磨く執事or侍女』そして…先生も頭が上がらない(それでは学校の意味がない)『価値者の生徒』。

そんな『価値者の生徒』は、血筋という肩書きをとても大事にしていて、親が優秀な価値者であればあるほど注目を集めるというものだ。

しかし、その優秀な親・家柄から生まれた、学園の『価値者の生徒』の一人は、悪目立ちしていた。

『クリスタル・紫・ダイヤモンド・メニー』は、父のダイヤモンド、母のオパールの力を受け継ぐはずだった…。

『だった』というのが、悪目立ちの理由だ__。

――――――――――――


「見て…〈はぐれ価値者〉よ。」

「まぁ。綺麗なお召し物を着てらっしゃるわ。」

「お家柄が良いだけですのにね。」

「言い過ぎよ。ご不興を買ったら、なにをされるか分からないわ。」

「皆さん、聞こえてしまいますわよ。」


遠くから聞こえる明らかな嫌味に、溜め息をついているのは、『はぐれ価値者』と周りから呼ばれている『クリスタル・紫・ダイヤモンド・メニー』だった。クリスタル・むらさ…通称『メニール』は、春のうららかな日光に癒やされているところだったのに…。

もう一度溜め息をついてから、ベンチの背もたれに寄りかかる。


(聞こえているわよ…。)


 メニールは、そう思いながらも、何も言わずに黙ってそれに耳を傾けていた。


「まぁ。だらしのない…。」

「余裕ね。」

「仕方ないわよ。成績優秀だもの。」

「品行方正で、愛想もよくて、お家柄も確か。」


(褒めてくれて、ありがとう…。)


 たまーにだけれども、褒めてくれるので、そこは心の中で感謝する。これもお昼の日課になりつつあるので、あきれるしかない。


 入学式から、早1ヶ月。なのに、この扱いは変わらない。

首席で入学したものは、陰口を叩かれるのが有名なこの学校…。メニールはそれを避けるために、入学試験でも、その後のテストでも加減をしたはずだった。しかし、行を間違えてしまって…全て書き直してから、「よしっ!間違えよう(加減をして)!」と、意気込んだ矢先に「キーンコーンカーンコーン…」(首席確定)。

 …というドジ(失敗)の元、今の状況になった。まぁ、首席合格→有名になる→陰口…なら、こんなに疲労したりしない。

 首席になったは、なったで色々な仕事を任される(主に価値者の生徒)なんて、地獄の労働に近い。心身ともに、こそぎ落としに掛かられるなんて聞いていない…と、メニールは頭を抱えていた。


(成績をそこそこ落とせば良いのだけれど…)


 そんなことをしてみろ。(自慢じゃないが)満点でオールAなのに(二回も)、成績が少しでも下がったら…学校の先生が無理にでも(それこそ睡眠薬でも飲ませて)、病院に連れて行かれる。


「……ル !…メ…ー… !…」


小鳥の囀ずりがごとく、誰かが誰かを呼んでいる。


「今日も(表向きには)、平和ね。」


メニールが、そんなことを呟いたときだった。


「何処が平和なのよーっ!」

「現実を逃避しては、いけませんのよーっ!」

「……(びっくりした…)。」


後ろからの行き成りの声に、顔には出さなかったが驚いた。


「フリーム、ベリー!」


名前を呼ぶと、二人はにっこりと笑った。

紅い真っ直ぐな髪を肩口で揺らしている、活発そうな赤い瞳の少女は、『ガーネット・紅・ルビー・フリーム』。青い海のように波立った長い髪の、大人っぽい水色の瞳の少女は、『アクア・マリン・サファイア・ベリー』。

二人は、突然の移動教室をメニールに報せるため、呼びに来たようだ。


「嘘っ。私、机の上に支度しておいたのよ…。」

「うん。だから、机の中を探らなくてすんだよ。」

「・・・。」


メニールは呆気にとられたが、すぐに「そういえば…。」と思い出して苦笑した。

少し落ち着いた後、長い長い廊下をひたすらに三人で歩いて行く。


「目が痛い…。」

「毎度毎度、同じこと言わないでよ。…気持ちは分かるけどさ。」


 ダイヤモンドが所々に散りばめてある廊下は、見た目は上品でも、日が差すと目が開けられないぐらいに、光を反射する。


 「見た目は見とれるほど奇麗なのに、殺人級に目に悪いのよね。」

 「口が悪いですわよ。殺人だなんて…。」

 「あら!ベリーだって、言っているじゃない。」

 「え?…あ!ふ、不可抗力ですわ!」


 そんな二人の会話にメニールはふと、思い出した。


 「殺人級と言えば、男共のほうよ。」

 「……(また始まった…。)」

 「……(今日は何時間かしら。)」


 二人は不自然に口を閉じて黙ったが、メニールは気付かない。…気付くはずもない。


 「同級生の女の子たちから、『あの人、かっこいいわね。』とか、『あの人、どうかしら。』とか…。」


 早口にまくし立てるメニールに、二人は頷くだけにとどめた。


 「しかも…『声、掛けてみようかな…。』だなんて。声掛けてどうするのよっ。あと、『行っちゃえ!』とか『頑張って!ファイト!』とか…。何処をどうすれば、応援する側に回れるのよっ。」


要約するに……


 「男なんて、大っっっっっ嫌いっ。」



ゆっくり、じっくり書き進めていきます。


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