確信と誘い《いざない》
王都に招待され、三度皇帝の宮殿に向かった。もう慣れたのですぐ行けるだろうと思っていたが、皇帝から遣わされた者が数名見えた。どうやら正式な服装が望ましいらしい、すぐさま鎧を外して着替える。すると今日は馬車で移動することを告げられた。なぜそのようなことをするのかは分からなかったが、指示通りに行動して王都へ向かう。道中には様々な戦場での話を聞かせたり王都の話を聞いたりし、暇を持て余すことはなかった。
王都に着き、それから別の遣いもやってきた。大所帯で宮殿に向かう様は大層人目を惹きつけただろう。少し経って宮殿に着くなり晩餐会に呼ばれていることが知らされた。会場に足を運ぶとやはり眩しい。そこには巨大なシャンデリアや手間のかかった美味しそうな料理、そして数多の可愛いメイドがいた。その中の一人、長身の大人びた雰囲気を醸し出す女性に声をかけられる。
「琴霞様でしょうか?」
「あ、はい。」
「本日ははるばるお越しくださいましてありがとうございます。こちらへどうぞ。」
「どうも。」
あまり人との会話は得意ではないが、不思議とあの女性と話していたいと思った。てかすっげぇ含みのある声だな。外見も相まって興奮してきた。…まぁそんなこと言ったところで叶わぬ夢だろうがな。そう思っているうちに夜を迎えた。皇帝が席に着く。なんで俺の前に座ってんだよ。
「琴霞よ、褒めて遣わす。」
「ヘァ!?」
「なに抜かしている、貴様はもうじき聖者となるのだ。かの激戦の地、狂虚にて人外かと疑うほどに魔物を狩っただろう。」
「いや確かに狩ったが…」
全くもって理解ができない。皇帝は
「おい、神崎。説明してくれ。」
と言った。すると奥からあの含みのある声が。
「はい。この世界は『罪』というものを糧として成り立っています。罪によって魔物は精製されるのですが、魔物を狩り続けるなどしてそれを償いますと『聖者』と呼ばれる神聖不可侵な存在となるのです。」
どうやら俺はノルマを達成したようだ。だが聖者についての浅い知識によると、神と同等の存在として存在することになるはずだ。喜ばしいことなのかは解らないが、抗えないようだ。せいぜいあと少しの人生を満喫しよう。この食事も特別だな。てかあの人神崎って名前なのか。覚えておこう。
食事を終えた後、宮殿に泊まることになった。ベッドも恐ろしいくらい気持ち良い。金持ちの力に驚いていると神崎さんが部屋にやってくる。彼女曰く、俺の世話は一任されているらしい。手際よく紅茶を淹れ、俺の座るところまで持ってきてくれた。それから彼女は、自分がかつて聖者となったこと、そして今は人間に憑依して皇帝に仕えていることを自信満々にその大きな胸を張って教えてくれた。その話を聞き、少し安心した。ただ彼女の話は非常に長く、眠くなってきている。寝ても良いか許可を取り、ベッドの中に入る。再び気持ち良さに感心していると隣に人影が。神崎さんだ。
「ご一緒してもよろしいでしょうか?」
「あっはい。ご自由に。」
何さりげなく添い寝しようとしてんだよ。お兄ちゃんもう心臓破裂するよ。どうでもいいことを考えているともう寝てやがる。その身体をいやらしくうねらせる。これはもう狙っているようにしか思えないが、理性で抑える。それに疲れてきたと思い目を閉じると、一瞬で寝てしまった。