聖者の道
兵舎に戻り、急ぎ足で王都へ向かう準備を済ませる。先に戻っていた仲間達数名は何故急いでいるのか問うが、簡潔に王都に行くと言ってすぐさま駆け抜けた。馬車を呼ぼうかと思ったが、王都まであまり離れていないので徒歩を選んだ。ちなみに王都への道はよく整備されており、散族を見かけることは一切なかった。
数刻経ち、王都に着いた。罪人は入れないという法律が少し前にはあったが、罪人は生死の境で戦っており償おうとしている立場となったので、制限は撤廃されたようだ。今度は速やかに手続きを済ませて宮殿に向かう。ある程度道は覚えたので以前よりは早く宮殿に到着できた。門前の傭兵に話をして皇帝に会わせてもらうようにした。少ししてから傭兵に案内されて宮殿に入る。いつ見てもデカいし眩しいなここ。
「また来たのか。」
前にもいた、気味の悪い青年の声だ。
「あぁ、テメェにも用事があってな。」
刺々しく言葉を返し、皇帝に一言放つ。
「俺は罪人じゃねぇ。」
「確証はあるのか?」
「お前が信頼している気持ち悪い青年が一番知ってるだろ。」
「そうか、して何用だ?」
「お前をしばきに来た。」
「…今貴様は罪を犯したな。よって狂虚に帰ってもらおう。」
「んだと…共震!!!」
俺はこの空間の大気を震わせてステンドグラスなどを破壊する。皇帝は冷静さをかろうじて保ち、自身の得意とする空間魔法を俺に放った。するとどうやら俺は大罪人になったようだ。狂虚に飛ばされ、魔物を狩り続けることを余儀なくされた。
その夜、俺は眠ることが出来なかった。同じ部屋の仲間は寝相が悪く、更にはいびきをかく。精神的にも環境的にも寝れんだろう。二時間ほどたっただろうか、いびきも少なくなってきた。だとしても寝れない状況は続き、むしろ悪化した。朝を迎えても変わらず、兵舎を出るのは一番最後になった。戦場では魔物を多く狩りつづけた。まずは低級の魔物を一突きで葬る。襲い掛かる一体の中型魔物の腕を一振りで断ち切る。そして頭を叩き割る。後ろに控える数多の鳥類系の雑魚には鏡魔法を放ち、それによって集まった光を使って焼き殺した。少なくとも一時間でいつもの倍の四十体はあの世へ送った。それからもストレスは発散されず、永遠と奴らを相手に戦い続けた。一つ、また一つ魔物の身体が散る。快感へと変貌する死を与えた罪悪感は収まることを知らない。気分がいい。三時間を過ぎたころには二百体を葬り、六時間を過ぎれば四百、十二時間になれば八百体が俺によってやられていた。流石にノルマを無視しすぎたと思い、兵舎に戻り翌日。来る日も来る日も葬った。最低でも六百、最高では千三百。そんな生活を繰り返して一ヶ月。三万体を殺した頃に皇帝から王都に招待された。