第4話 MMO召喚は誰のせい -1-
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私は、そのとき社長おすすめのMMORPGの世界にどっぷりと嵌っていた。しかも、ヘッドギアを装着している。Web小説に載っているVRMMOみたいだが、そこまで高度なものではない。
社長が経営する会社が開発した映像をレム睡眠中の頭脳で認識できる装置は今売れに売れている。
ヘルメット内部のすり鉢状に投影された映像を夢に見せる魔道具を組み込んだ製品である。それをパソコンの映像出力端子に接続しているだけだ。
最近の研究で魔法を使おうとしたときに脳がレム睡眠状態に良く似た状態になることがわかってきた。普通の人間にも訓練次第でレム睡眠状態になれるらしい。
私ならばその状態を意図してできるからテスターとして選ばれたようだ。
この装置の映像はすばらしい。
社長が仰るには、右目と左目から入るバラバラに入る映像を1つの映像として認識できるように脳が認識する際に勝手に補完するらしい。
しかし、このヘッドギアを装着すると視界が遮られるため、キーボード入力は使えない。そのため幾つかの入力装置を考案しているところである。その最有力が眼球の動きでマウスカーソルを移動させる装置である。
この装置は、身障者用に昔から開発されてきたもので技術ノウハウの蓄積もすばらしい。マウスで動かすよりもよほど、スムーズに動作するのだ。
その次に有力なのが音声認識装置だ。これは完全に実用段階に入ってきているため、説明の必要もないだろう。『ファンクション・スリー』とか『アルト・エー』とかコマンドを叫ぶ必要があって少し恥かしいだけだ。
これらの入力装置を組み合わせてMMOを進めていく。
MMO自体は一般に流通しているものを利用しているのであるが・・・。
・・・・・・・
私は、渚佑子。千葉で生まれ育った18歳。でも、昼間はマンションの管理人をやっている。
普通は、マンションの管理人と言えば、中年のパートのおばさんか、管理会社に就職した男性社員がなる。じゃ、どうして私が管理人をやっているかというと、ちょっと事情がある。
私は、異世界に召喚されやすい人間らしい。しかも高校受験・大検試験・就職面接といった大事な時にばかり、召喚されている。
幸運だったのは3度とも元の世界に戻ってこれたことと、異世界で大賢者と呼ばれるほど魔法が使えるようになったこと。
そして最も幸運だったのは、3度目の召喚に巻き込んでしまった面接官の社長に出会え、そのまま就職させてもらえたこと。
その後も幾度となく召喚され続けているのだが、その度に解呪魔法で跳ね除けている。ただこの世界では、MPはほとんど回復しない。異世界なら一晩で回復したものが1ヶ月もかかる。
つまり、解呪魔法は連発できない。しかも、寝ている間に召喚されることもありうる。
そんな窮状を聞きつけた就職先の社長のご好意により、反転魔法陣の上に建てられたマンションの管理人をやらせて頂いている。
このマンションの分譲スペースは完売なのだが、モデルルームは、目と鼻の先に建てられたままになっている。
私を召喚しようとする召喚者は、反転魔法陣で逆にこの世界に飛ばされてくる。そしてその到着場所が、このモデルルームになるようにしてある。
私にはこのマンションの管理人であると共に、このモデルルームにやってくる召喚者を排除する役割があるのです。
ピンポーン。
あのチャイムの音は、モデルルームに付けられたセンサーの音だわ。
今日もどこか異世界の召喚者がやってきたみたい。さあ、仕事、仕事。
◆◆◆◆◆◆◆
例のチャイムが鳴ったとき、私は呆然としていた。いきなり、目の前に居たMMOのNPCたちが一斉に消えてしまったからだ。周囲を見渡すとそこかしこに居るのはプレイヤーばかりで1人たりともNPCが存在しなくなってしまった。
私は慌ててヘッドギアをはずしモデルルームに行こうとするがそこにスマホの着信メロディーが鳴り響いた。
あのメロディーは社長だ。私はモデルルームかスマホか一瞬迷ったがスマホを取り上げ画面をタッチする。
社長の話の内容は3度もの異世界召喚を経験した私に取っても驚愕に値するものだった。
あのMMOを製作し運営している会社をVRMMO製作のため、買収予定で丁度いま見学していたところだったらしい。
見学する人が多いのか運営スタッフが居る部屋と廊下は、透明なガラスで仕切られており、案内してくれた担当者が部屋に入り廊下側から社長が見ていたとき、パソコンの画面が不思議なフラッシュをしたかと思うとパソコンの画面の前に居たスタッフ全員がその場から忽然と消えてしまったという。
私はMMOをプレイしていたことを伝え、不思議なことにNPCたちが同じように消えてしまったことと今、召喚者が現れていることを伝えた。
そうすると社長からどんなことをしても情報を引き出すようにお願いされた。社長の想像では今回の召喚者と運営スタッフの消失事件は無関係と思えないらしい。
・・・・・・・
モデルルームに入っていくと線の細く存在感が希薄な女性が近くのソファに座って佇んでいた。
「貴女は誰。私はなぜ存在して、こんなところに居るの?」
その女性は、私に向かって不思議な言葉を呟くとそのままソファに倒れこんでしまったのだ。
《つづく》
今度はMMO集団召喚ですね。
そして召喚者は・・・・。