第3話 幼馴染の勇者が召喚者 -1-
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「ああ・・・ゆうやっ・・・。」
「しょうこ!」
私の目の前で勇哉がダンジョンの大穴から奈落の底に落ちていった。
・・・・・・・
私は、管理人室兼自宅のベッドで飛び起きる。
はぁはぁ・・・はぁ。
もう何度も見た夢だ。
いや、向こうの世界で現実に起こったことだった。私が幼馴染の勇哉の召喚に巻き込まれ、魔王討伐のためのレベル上げのダンジョン攻略の際に勇哉を襲った初めての危機だった。
その後も何度も勇哉に危機が襲ったが、この初めての危機で私は絶望感で目の前が真っ暗になったのだ。ダンジョンに同行していた筆頭魔術師のラスが私を引き摺り出してくれなければ私もどうなっていたか解からない。
ダンジョン近くの宿屋で寝込んでいた私の前にケロっとした顔で戻ってきた勇哉に抱きついて大声で泣き叫んだのは恥かしい思い出だ。
・・・・・・・
私は、渚佑子。千葉で生まれ育った18歳。でも、昼間はマンションの管理人をやっている。
普通は、マンションの管理人と言えば、中年のパートのおばさんか、管理会社に就職した男性社員がなる。じゃ、どうして私が管理人をやっているかというと、ちょっと事情がある。
私は、異世界に召喚されやすい人間らしい。しかも高校受験・大検試験・就職面接といった大事な時にばかり、召喚されている。
幸運だったのは3度とも元の世界に戻ってこれたことと、異世界で大賢者と呼ばれるほど魔法が使えるようになったこと。
そして最も幸運だったのは、3度目の召喚に巻き込んでしまった面接官の社長に出会え、そのまま就職させてもらえたこと。
その後も幾度となく召喚され続けているのだが、その度に解呪魔法で跳ね除けている。ただこの世界では、MPはほとんど回復しない。異世界なら一晩で回復したものが1ヶ月もかかる。
つまり、解呪魔法は連発できない。しかも、寝ている間に召喚されることもありうる。
そんな窮状を聞きつけた就職先の社長のご好意により、反転魔法陣の上に建てられたマンションの管理人をやらせて頂いている。
このマンションの分譲スペースは完売なのだが、モデルルームは、目と鼻の先に建てられたままになっている。
私を召喚しようとする召喚者は、反転魔法陣で逆にこの世界に飛ばされてくる。そしてその到着場所が、このモデルルームになるようにしてある。
私にはこのマンションの管理人であると共に、このモデルルームにやってくる召喚者を排除する役割があるのです。
ピンポーン。
あのチャイムの音は、モデルルームに付けられたセンサーの音だわ。
今日もどこか異世界の召喚者がやってきたみたい。さあ、仕事、仕事。
◆◆◆◆◆◆◆
「もしかして、勇哉?」
「渚佑子か。ここは、日本か。・・・・どういうことだ。戻ってきている。」
私がモデルルームに到着すると、そこには呆然とした表情の小学生の姿の勇哉が立っていた。
「そうよ。ここは日本。貴方は戻ってきたのよ。」
ここに勇哉が居るということは、勇哉が召喚者なんだ。だけど幼い姿になっているのは、どういうことなんだろう。
相手が勇哉だというだけでなんでこんなにも思考能力が低下してしまうんだ。よく考えろ。
「とにかく、いま異世界が大変なんだ。渚佑子。」
どういうことだろう。勇哉の手で魔王を討伐したから異世界の危機などもう無くなったはず・・・。
「帝国が攻めてきたんだ。」
そんなバカな。帝国の皇子は、私たちの味方で魔王討伐の仲間。特に私に取っては、異世界で優しくしてくれた数少ない人物・・・。
だが・・・。
「関係ないわ。帝国に併合されれば問題ないじゃない。それとも自分のモノになるはずだったものを取り上げられそうになっているからなの?」
私が送還されるとき、勇哉はロシアーニア国の幼き王女との婚約話が纏まっていた。
「なにぃ。貴様・・・。」
目の前で勇哉が怒り狂っている・・・。
勇哉ってこういう人だったのね。
いや、幼いときの勇哉はガキ大将で自分の思い通りにならないことには、力でねじ伏せようとする子供だった。
少し冷静になってきたみたい。
いままで恋愛フィルターを通してみていたんだわ。真実の愛に目覚めた今の私には解かる。勇哉を見る過去の自分がどれだけ、愚かだったのかを・・・。
「とにかく、一緒に来い!」
私の腕を取り強引に引っ張ろうとしているが、子供の力のせいなのか微動だにしない。笑ってしまいそう。
「嫌よ。しかも、どうやって?それにその姿で何処へ行こうと言うの?」
勇哉が怒り狂えば狂うほど、自分が冷静になっていくのが解かる。帰る方法など、絶対に教えてやるものか。
「えっ。こ、これは。」
勇哉が自分の身体を見下し驚愕の声を上げる。そしてよろめいた。
勇哉が使っている鎧は、伸縮自在で子供の身体にもフィットしているのだが子供には重すぎるのだろう。ということは、異世界で鍛え上げた力を全て失っているらしい。
《つづく》
少しだけ主人公の過去が・・・。
そして、召喚者はなぜ若返ったのか?