第2話 魔王と鬼畜な召喚者達 -3-
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このときほど、社長にこのマンションを用意してもらってよかったと思ったことはない。あの方は、私の救世主だったのだ。なんと、目の前に頭から角が生えた、あきらかに魔族とおぼしき男が現れたのだ。
もし1回目の召喚のときに解呪魔法を使っていたら、この魔族に召喚されていたことは、間違いがない。そうすれば、どんな目にあっていたか、想像したくもない。
元々社長には、お礼をしたいと言ってある。たとえこの身を捧げてもいいくらい感謝しているし好意も抱いている。
だが、あの方は、たいしたことは、していないのだという。同じ異世界に召喚されたものとして少しだけ幸せのお裾分けをしているのだと言うのだ。
好意の押し付けをしたくなかったのでそれで、話は終ったのだが、周囲の人間によると彼は、好意に対して鈍感なのだという。
このときから、たとえ押し付けであっても、彼に対して感謝を示したい。彼の喜ぶ顔を見たいという欲求がふつふつと湧いてきたのである。
・・・・・・・
『人族の賢者召喚に邪魔をいれてやろうと魔人召喚をしたはずなのに、なんで我は、こんなところに居るのだ。』
直に頭に響いてくる。私は、以前異世界に召喚された際に掛かった付録なようなもので、どんな世界の言葉でも解かるようになっているから、普通に喋ってもらえばいいが、隣に居る男は、違うだろうからちょうどいいかもしれない。
「貴様、魔族か。そ、その外見は、まさか魔王っ。」
(まずい。こいつらを拘束してしまった今、1人で相手しなくては、ならない。まずい。まずい。非常にまずい。なんて、役立たずなんだこいつらは。)
自分で拘束しておいて、勝手なことを思っている。バカか。いや、バカ決定。
さあ、どうする。幸いにもこのモデルルームには、アクティブな魔法陣が組み込まれており、震度9の地震が来ても耐えうるし、内部で使った属性魔法は、建物に当っても霧散してしまうから、大丈夫だと思うが・・・。
「心配せんでも、素直に帰るから大丈夫だぞ。」
突然の重く響くような印象的な声で魔王様が話しをしだした。
(わからん。なんで突然、知らない言葉で喋り出したんだ。)
どうやら、この魔王様は、私の心を読めるらしい。表層意識だけだろうか。考えていることを思い浮かべないようにしなくては、いけないのか。
それならば、そんなに難しいことではない。『大賢者』のスキルである無暗唱の応用で何とかなる範囲だ。
「だから、そんなに心配しなくても、大丈夫だ。女性の心の奥底を読み取るなんて、無粋なことはしない。いや、正直に言おう表層意識と違って、心の奥底の情報をすべて読み取って、その中から、今考えていることを解析して拾い出すのは、非常に時間が掛かるのだ。そんな無駄なことはしない。約束するぞ。」
どうやら、この魔王は、隣の男とは、違い非常に紳士的な人物のようだ。
『俺はご想像の通り魔王だ。魔族の王ってだけなんだけどな。名前はオラィルム・サバイバ。歳は200と30の若造だ。』
「なにが若造か。お前たちの出してくるちょっかいで、どれほどの国民が困っているか!」
勝手になにかを憤っている。ウザイぞ。この男、ウザイ。
「オラ。と呼んでくれるとうれしいぞ。」
そう言って、こちらにだけ解かるようにウインクをしてくる。その言葉に思わず噴出す。お茶目なところもあるようだ。このオラ魔王様は。
「な、なんだ。コイツは、魔王だぞ!人族の敵だ!そんな、楽しそうな顔で見つめあってんじゃねえっ!」
ウザイ。本当にウザイな。どうせなら、オラ魔王様が持ち帰ってくれないかな。
「ヤメておくよ。こんな、ウザイのを持ち帰ったら、側近に叱られてしまうわ。怖いんだぞ。我の側近は。」
少し涙目になりながら、オラ魔王様が言う。なんか、ガラガラっと魔王様のイメージが音を立てて崩れ去っていく。では、さっさとお帰り戴いて、再度交渉に入ったほうがいいな。
私は、これまでの人生を簡単に思い浮かべる。そのほうが、魔法陣の説明がしやすいからだ。
「本当に良くグレずにここまで来たな!」
なんか、めちゃめちゃオラ魔王様に同情されているようだ。なんか恥かしくなってきた。
続けて、この反転魔法陣の用法、用量を先ほどの男たちを例にして思い浮かべる。あわてていたせいか。いままでの出来事をすべてぶちまけてしまった気がするが、まあいいか。
『ん。鬼畜じゃないか。この男、仲間を生贄にして、自分だけ帰ろうとしていたのか。』
《つづく》
魔王と言っても魔族を率いる王です。
いったい、この社長は誰。もちろん、謎の人物です(笑)
日本の気象庁から出す震度は最大7です。震度9はメルカリ震度12相当とお考え下さい。