第2話 魔王と鬼畜な召喚者達 -1-
お読み頂きましてありがとうございます。
各話のどこかに同じような文章のプロローグが入ります。
必ず一番前と限りませんが第1話と第2話は一番前に入っています。
◆で区切られたところまでがプロローグです。
私は、渚佑子。千葉で生まれ育った18歳。でも、昼間はマンションの管理人をやっている。
普通は、マンションの管理人と言えば、中年のパートのおばさんか、管理会社に就職した男性社員がなる。じゃ、どうして私が管理人をやっているかというと、ちょっと事情がある。
私は、異世界に召喚されやすい人間らしい。しかも高校受験・大検試験・就職面接といった大事な時にばかり、召喚されている。
幸運だったのは3度とも元の世界に戻ってこれたことと、異世界で大賢者と呼ばれるほど魔法が使えるようになったこと。
そして最も幸運だったのは、3度目の召喚に巻き込んでしまった面接官の社長に出会え、そのまま就職させてもらえたことである。
その後も幾度となく召喚され続けているのだが、その度に解呪魔法で跳ね除けている。ただこの世界では、MPはほとんど回復しない。異世界なら一晩で回復したものが1ヶ月もかかる。
つまり、解呪魔法は連発できない。しかも、寝ている間に召喚されることもありうる。
そんな窮状を聞きつけた就職先の社長のご好意により、反転魔法陣の上に建てられたマンションの管理人をやらせて頂いている。
このマンションの分譲スペースは完売なのだが、モデルルームは、目と鼻の先に建てられたままになっている。
私を召喚しようとする召喚者は、反転魔法陣で逆にこの世界に飛ばされてくる。そしてその到着場所が、このモデルルームになるようにしてある。
私にはこのマンションの管理人であると共に、このモデルルームにやってくる召喚者を排除する役割があるのです。
ピンポーン。
あのチャイムの音は、モデルルームに付けられたセンサーの音だわ。
今日もどこか異世界の召喚者がやってきたみたい。さあ、仕事、仕事。
◆◆◆◆◆◆◆
ピンポーン。ピンポーン。ピポピポピポピポピポピポピポピンポーン。
続けて沢山鳴り続けるチャイムの音に追われるように、私はモデルルームへ向かった。どうやら、私を中心とした集団召喚を狙った召喚魔法が発動したようだ。
モデルルームに飛び込むとそこに10名ほどの男たちが不安そうに佇んでいたのである。
「ここは、どこだ!きみは、誰なんだ!」
おそらく、この中では、一番偉い人なのだろう。ひと際、引き締まった身体は、魔術師と思えない。
「ここは、日本という国です。ここでこの建物の管理人をしております。ショウコと申します。」
うーん。どうしようか。この人数を1人で相手するのは、つらい。よし、あの魔法陣を使おう。このモデルルームには、常にアクティブ状態な魔法陣もあれば、臨機応変にMPを投入すれば使えるようになる魔法陣もある。
(なんだ。この小娘は・・・。)
よし、聞こえてくる。読心の魔法陣を起動したのだ。これで、この場に居る人間の考えていることがわかる。表層意識のみだが、相手が攻撃をしようとした場合に対処することは、可能となったはずだ。
聞こえてくる感情では、私にあまりいい印象を持っていないようだが、それほど悪いわけでもなさそうだ。私が与える情報が必要なのは、皆解かっているようだったからだ。
「俺達は、10名前後の集団召喚が行えるだけのMPを投入したはずだが、どうなっているんだ。これは。失敗だったか?」
その男は、私に向かって言っているわけでは、なく自問自答しているようだったが、最後は、隣に居た同僚と思われる男に向かって聞いていた。
「いえ、過去の失敗とは、まったく違う工程を得ました。成功したと思ったのですが・・・。」
「おまえ、管理人と言ったな。なにか知っているのか?」
(こんな小娘がなにかをやったとは、思えんが・・・。)
随分と見下されているようだ。これでは、正直に教えないほうがいいな。
「いえ、ときおり、ここに人が現れることがあるのです。貴方達こそ何者です。警察を呼びますよ!」
「団長!あれは!あっちも、いったいなんなんだここは。」
隅のほうにいた男が声を上げているモデルルームの外の風景を見ているようだ。
団長と呼ばれた男がそちらのほうに走っていく。
(なんだ。あの巨大な建物は・・・。どこかの王宮の塔かなにかか。まずい、よその王宮に移動してしまったとしたら、無事にすまない。)
私は、追い討ちをかけるように発言する。
「警察を呼びましょうか?それとも、帰れるならば帰ってください。今なら私の一存で穏便に済ますことができますから。」
(うん。この女、この王宮の有力者の娘かなにかか。どうやら、この女にすがるしかなさそうだ。)
「ま、まってくれ!帰り方が解からないんだ。ほ、ほかに帰った人間が居るのか?」
「そうですね。突然、『送還』と叫んだら、消えた男がいたようです。」
相手が送還魔法を使えるなら、このまま、帰ってもらったほうが助かるので、それっぽく助言してみる。
(送還魔法だと、確かに召喚魔法でここに来たのだから、送還魔法を使えば・・・。だが、この人数がここへ来るのにも、奴隷100名の生贄が必要だったんだ。もちろん、送還するつもりもなかったから送還魔法用に奴隷なんて用意なんてしていなかったし、そんなこと奴隷を用意してもらった王妃や主要貴族に頼めるはずもない。困ったな。)
異世界で100名もの奴隷を生贄に捧げたらしい。ということならば反転魔法陣の作用で、かの国では、この召喚魔法で王妃や主要貴族が死んだことになる。
まったく、鬼畜な行いをするものだ。愚かしいったらないな。だが王は、生き残っているらしい。帰還してもらって、王に裁いてもらうのもいいかもしれないな。
《つづく》
今回は多大な生贄が必要な集団を対象とした召喚です。
前話の異世界とパラレルに存在する異世界の召喚者達です。
タグにも書きましたが次々といろんな条件の召喚魔法が出てくる予定です。