第9話 召喚装置と結界魔法陣 -2-
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私も魔石を拾って、鑑定魔法を唱えてみる。カーネリアンという石らしい。スマホで検索してみたところ、宝石では無いらしい。
異世界では魔石を様々な道具のエネルギー源として利用していたが、日本ではただの屑石同然だ。だが、社長が異世界の道具を持ち帰っているはずなので、渡せば喜んでくれるに違いない。
それにしても、まだまだ増え続けるオークたち、ゴディバの頑張りでなんとか20頭前後を維持していたのだが緑色のオークが混ざり始めると途端に攻略速度が落ちる。
ゴディバに対して敏捷性向上・肉体強化の支援魔法を唱えるのだが、それでも雑魚ほど簡単に倒れてくれなくなった。
「遅くなりました。」
そこにタイミング良くココが入ってきた。
ココは、ゴディバが緑色のオークに苦戦している今の状態を冷静に判断したらしく。
雑魚オークを中心に彼女が得意な火魔法の『ファイアボール』を撃ち込んでいる。ただ、雑魚オークとはいえ殺すためには少なくとも3発の『ファイアボール』が必要なようだ。
さらに強力な『フレイムボール』ならば1発で殺せるだろうがMPが3倍以上掛かる。しかも何発に1発かは、防いだり避けられたりするのだから、コストの低い魔法を連発せざるを得ない状態だ。
30分も連続使用していれば、当然MPも枯渇してくる。その度にMP回復ポーションを飲む。
異世界ならコストの低い魔法を連発するのを上回る自然回復があるのだが、日本ではほとんど自然回復しないため、3日間連続使用しても耐えられるだけのレアのMP回復ポーションを常備しているのだ。
・・・・・・・
戦いは日が暮れるまで続けられた。
日が暮れだすとなぜか召喚されるオークの数が減ってきたのだ。
きっと、オークの世界も夕暮れなのだろう。日が暮れると活動できないのかもしれない。
だが、それで油断してしまった。
少なくなったオークを全て叩き潰すために前に出てしまったようだ。
周囲のオークを全て殺し終わり、ホッとしたのがいけなかった。
突然、緑色のオークが目の前に召喚されてきたのだ。
私の得意とする風魔法は一定距離、離れていないと効果がでない。咄嗟に『箱』から魔剣を取り出すものの、この距離ではMPを投入して雷を発生させることもできない。
ただひたすら身を守ろうと相手に剣を向けるのが精一杯だった。
視界には、もう1頭の緑色のオークと戦っているゴディバの姿があるし、ココの位置も確か後方だったはずだ。魔法を放てば私を巻き込んでしまうから、動けないに違いない。
身を守るはずの魔剣もオークの軽い腕の一振りで弾き飛ばされ、そのまま、オークが圧し掛かってくる。
このまま、なぶり殺しにされたくないと思いながらも恐怖に身がすくんでしまって何も考えられない。
オークの手が私の装備を掴んだと思ったら服ごとちぎられてしまった。
もしかして、この世界のオークの繁殖相手は人間なの?
オークの怒りたぎった下半身を押し付けられ、はっきりと貞操の危機だと思い知らされてしまう。
こんなことなら、何が何でも社長を襲っておくんだった。
「お姉さま!」
「ナリス!こないで!」
そこへ英国で平穏な生活を送っているはずの公爵令嬢が飛び込んできた。ナリスにこんな姿を見られるくらいなら、初めから一緒に戦ってもらえばよかったと思ったが後の祭りだ。
ナリスは、不用意にもオークのすぐ近くまで来る。
オークも相手が子供だから油断したのか平然と近寄るのを許している。
『ヘブンズレイ』
そこへ中級の光攻撃魔法が放たれる。ナリスの小さな掌から緑色のオークの頭に向かって光線が伸びるとそのまま、頭が吹っ飛びモデルルームの天井にぽっかり穴が開いた。
モデルルームの壁という壁は火・水・風・雷属性の耐性を持つように魔法陣が組まれており、かつ、コンクリート内部の鉄筋代わりにミスリルが使われているため、無属性の闇魔法も効かないのだが、唯一の弱点が光魔法なのだ。
その光魔法の数少ない攻撃魔法が使われたのでは、いかにモデルルームが強力に作られているとはいえ、非常に脆い。直径1メートルほどの大穴が開いてしまったのだ。
たしか、このモデルルームのあの方向には何も建物は無かったはずだ。
「おい。全て倒し終わったぞ。それ隠さなくてもいいのか?眼福・眼福。」
私がモデルルームの天井の修理費に思いを巡らせているともう1頭の緑色のオークを倒したゴディバと他の雑魚オークを全て倒したらしいココが近寄ってきたのだ。
隠すって・・・・。
「きゃぁ。」
そうだった。
オークに装備ごと服を剥ぎ取られたんだった。
上半身も下半身も下着が丸見えになっている。
ゴディバの視線をかわすように残った服で隠そうとしゃがみ込んだ。
やっぱり戦闘シーンは難しい。
 




