第9話 召喚装置と結界魔法陣 -1-
お読み頂きましてありがとうございます。
おかしい。
例のチャイムが鳴ったときに食事中だったので待たせておけと思い、食事を終らせ食器の片付けを終らせる15分間までにもう5回もチャイムが鳴り続けている。
合計6人の召喚者が来たというのか?
信じられない。
いままでは、こんなことが無かったのに、まさかセンサーの故障だろうか。とにかく、社長に1度来てもらおう。
私が社長にメールを打ち送信するまでの数分の間でも3回も鳴っている。
・・・・・・・
私は、渚佑子。千葉で生まれ育った18歳。でも、昼間はマンションの管理人をやっている。
普通は、マンションの管理人と言えば、中年のパートのおばさんか、管理会社に就職した男性社員がなる。じゃ、どうして私が管理人をやっているかというと、ちょっと事情がある。
私は、異世界に召喚されやすい人間らしい。しかも高校受験・大検試験・就職面接といった大事な時にばかり、召喚されている。
幸運だったのは3度とも元の世界に戻ってこれたことと、異世界で大賢者と呼ばれるほど魔法が使えるようになったこと。
そして最も幸運だったのは、3度目の召喚に巻き込んでしまった面接官の社長に出会え、そのまま就職させてもらえたこと。
その後も幾度となく召喚され続けているのだが、その度に解呪魔法で跳ね除けている。ただこの世界では、MPはほとんど回復しない。異世界なら一晩で回復したものが1ヶ月もかかる。
つまり、解呪魔法は連発できない。しかも、寝ている間に召喚されることもありうる。
そんな窮状を聞きつけた就職先の社長のご好意により、反転魔法陣の上に建てられたマンションの管理人をやらせて頂いている。
このマンションの分譲スペースは完売なのだが、モデルルームは、目と鼻の先に建てられたままになっている。
私を召喚しようとする召喚者は、反転魔法陣で逆にこの世界に飛ばされてくる。そしてその到着場所が、このモデルルームになるようにしてある。
私にはこのマンションの管理人であると共に、このモデルルームにやってくる召喚者を排除する役割があるのです。
ピンポーン。
あのチャイムの音は、モデルルームに付けられたセンサーの音だわ。
今日もどこか異世界の召喚者がやってきたみたい。さあ、仕事、仕事。
◆◆◆◆◆◆◆
私は、モデルルームの入り口の扉を開け掛け、すぐに閉じた。
う。
見間違い?
もう一度、そうっと扉を開けて覗くとそこに居たものは、オークだった。
それも10頭以上居る。
いったいどういう原理なのか。
もしかすると異世界には、召喚装置でもあって、それが勝手に連続動作している?
召喚装置の前に並んだオークたちの一部が生贄となり、1頭のオークが反転魔法陣で飛んでくる。
そんな嫌な光景が見えるようだった。
私は、慌ててウィークリーマンションに住む異世界の住人たちに召集をかける。といっても居るのは、居候と化しているゴディバと最近入った元勇者パーティのココだけだ。
いや、偶々ナリス公爵令嬢も来ているのだがあの子にオークの相手をさせたくないのだ。
まあ慌てなくてもいいのだけど・・・。
実は、モデルルームの扉側は結界となっており、私が結界の中に引っ張り込まないかぎり、こちら側には来ることができないようになっているためだ。
ぴんぽーん。
さっきから結界の外に出られるのだ無機物の剣先だけだ。そこは、十分に間合いを取っているので大丈夫だが、今飛び込んできたオークは槍使いみたいだ。これで弓使いでも現れたら、逃げられない。
「大丈夫か?渚佑子。」
そこへようやく鎧姿のゴディバが飛び込んでくる。完全装備のようだ。
「いつから、ここは本物のダンジョンになったのだ!」
まあ、そう見えるよね。ダンジョンみたく、殺した場合消えてくれたら助かるのだけど、このオークすべての死体処理なんぞしたくない。
「とにかく、やっつけて!」
「お、おう!」
ゴディバはそう言いながら、近くに居た1頭のオークを剣で切り捨てる。首が切り離されたオークは、青い血飛沫を巻き上げながら消えていった。後には、魔石と思われる赤い石が落ちていた。
「本当にダンジョンのモンスターみたいだな。」
ゴディバはいつもの癖なのだろう。赤い石を拾いながら、そんな感想を述べた。
私が行った異世界のダンジョンのモンスターは、ダンジョン内に立ち込める濃厚な瘴気から発生していると言われ、倒してもその肉体が残らず、消えてしまうのが特徴だ。
「ゴディバ退いて!」
『ウィンドカッター』
私はゴディバが戻って来たところで、風の攻撃魔法を連続して唱える。
実はこんな雑魚オークなど、中級の攻撃魔法で一発で殺せるのだが、死体がどうなるか見てみたくて、ゴディバを呼びつけたのだ。
《つづく》
ネタ切れかな。
それとも、いつものごとく戦闘シーンでは、無茶苦茶鈍る私の筆・・・(泣)
進行遅くてすみません。




