第8話 ビッチな女神の召喚者 -1-
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その夜は、台風でもないのに、突然の暴風雨に見舞われていた。ところ構わず稲光が怒り、このまま世界が破壊されるのではと思うほどだった。
そんな天気が3時間も続いたのち、終るのも突然ピタっと鳴り止んだのだ。
天気予報の解説者やテレビのコメンテーターは、ありえないできごとだと連呼していたし、一部の新興宗教の教祖は、世界の終わりだと騒いでいた。
突然始まり、突然終った暴風雨のせいで気圧が乱高下したのだろう。
その日の夜に寝付いたのは、夜中を過ぎたあたりだった。
まさか、真夜中にあんなお客さまがいらっしゃるとは・・・。
・・・・・・・
私は、渚佑子。千葉で生まれ育った18歳。でも、昼間はマンションの管理人をやっている。
普通は、マンションの管理人と言えば、中年のパートのおばさんか、管理会社に就職した男性社員がなる。じゃ、どうして私が管理人をやっているかというと、ちょっと事情がある。
私は、異世界に召喚されやすい人間らしい。過去に高校受験・大検試験・就職面接といった大事な時にばかり召喚されている。
幸運だったのは3度とも元の世界に戻ってこれたことと異世界で大賢者と呼ばれるほど魔法が使えるようになったこと。
そして最も幸運だったのは、3度目の召喚に巻き込んでしまった面接官の社長に出会え、そのまま就職させてもらえたこと。
その後も幾度となく召喚され続けているのだが、その度に解呪魔法で跳ね除けている。ただこの世界では、MPはほとんど回復しない。異世界なら一晩で回復したものが1ヶ月もかかる。
つまり、解呪魔法は連発できない。しかも、寝ている間に召喚されることもありうる。
そんな窮状を聞きつけた就職先の社長のご好意により、反転魔法陣の上に建てられたマンションの管理人をやらせて頂いている。
このマンションの分譲スペースは完売なのだが、モデルルームは、目と鼻の先に建てられたままになっている。
私を召喚しようとする召喚者は、反転魔法陣で逆にこの世界に飛ばされてくる。そしてその到着場所が、このモデルルームになるようにしてある。
私にはこのマンションの管理人であると共に、このモデルルームにやってくる召喚者を排除する役割があるのです。
カンコーン。
ピンポーン。
ん。あ、あのチャイムの音は、モデルルームに付けられたセンサーの音だよね。うん。
今日もどこか異世界の召喚者がやってきたみたい。さあ、仕事、仕事。
◆◆◆◆◆◆◆
その日のチャイムが鳴ったのは、明け方近くだった。眠い目を擦りながら、モデルルームに向かう。わざわざ、こんな日の夜に来なくても・・・。
その場所に居たのは、美しい女性だった。一点の曇りもない澄んだ瞳に、まさに黄金律体型のように左右対称でありながら、一切の違和感を感じさせず、その場に佇んでいた。
さらに少し翳りを帯びた顔が美しさを一層引き立たせており、男女問わず誰もがひと目惚れしそうな。そんな容姿だった。
身体も9頭身は、あろうか。頭が小さいため、170センチを少し越えたくらいのモデル体型、足も腕もそれなりに肉付きがありながら、きっと骨が細いのだろう。
ちっとも、太いと思う部分がないくらい、ほっそりとした身体だった。
しかも、その身体に不釣合いのような、大きからず小さからずの大人の男性の手でも余りある大きさの胸がいやにも、存在感を与えてくれる。
そんな女性だ。
だが、そんな完璧を通り越してSSS級美女の名を欲しいままにできる女性が身につけているものは、わずかな布を駆使したボディコン服。
たしかにこの女性の良いところがつぶさに見られるその戦闘服は、彼女の魅力を何倍にも高めているに違いない。
いまにも中が覗けそうな超ミニのスカートから伸びたスラリとした長い足とそれに比例する高いお尻は、世の女性たちの嫉妬の的になるだろう。
さらに赤いピンヒールとくれば、たとえ時代遅れな格好であっても、男たちが群がることは、間違いなさそうだ。
ただ、大きめな胸を強調するように腕を組み、こちらを睨みつけるような視線を送ってくるのが印象的だった。
「お前か。こんなことを仕組んだのは。」
そんな美女の第一声は、余りにも雄雄しい声だった。流石に男性の声では無かったものの、その完璧すぎる容姿もあって、性転換したニューハーフのような印象を与えてくれたのだった。
紛い物だからこその一級品、すべて作られた容姿。
そんな印象を与えてくれたのだ。
まさにそんな直感がぴったり、当てはまる相手だったのだ。今回の相手は。
《つづく》
今度の召喚者はいったい何者?
ってバレバレやん。
この召喚者も定番ですね。
「ネトラレ男のすべらない商売」
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第3節「休暇編」で渚佑子が出てきます。社長サイドの話なのですが、なんと、第三回エリュシオンライトノベルコンテストで二次選考を通過致しました。6284応募作品中の50作品の中に入ったそうです。
本作品とは全く違う方向性ではございますが、是非ともご一読頂きますようお願い申し上げます。




