第7話 召喚の対象は悪役令嬢 -2-
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彼女は、国立大学の経済学部を出て財務省に入ったエリートだが、それに反して見た目は物凄く可憐で誰に対しても優しくしすぎて、男のほうが俺を好きなんじゃないかと勘違いしてしまうような女性だ。
この見た目と性格によって、多くの自称彼氏のストーカーが居り、そのストーカー同士で刃傷沙汰に発展してしまうというほどだという。そのせいで国家公務員という仕事も辞めるを得ない状態だったらしい。
彼女もこの日本で暮らしたくなく異世界に行きたいのだという。その彼女も女性同士だとサバサバした関係を維持できるし、ゴディバに言わせると私以上にドSなのだと言う。
初めの刃傷沙汰は違うらしいが最近のストーカー同士の刃傷沙汰は、彼女が意図して企み今では、多くのストーカー諸氏が刑務所に入っているのだという話だった。
そんな彼女なら王太子妃の座をゲットするのも容易いはず。
むしろ、国王を誑かしてしまうことさえできるに違いない。
・・・・・・・
私もそれなりに容姿は整っていると思うし、容姿でそんなに大差が無いと思うのだが、彼女には負ける。
見る男の人の目に勝手に可憐という名のフィルターが掛かってしまうらしい。
どんな男でも虜になってしまうだろうに違いない。
私が召喚者に紹介すると。
それまで渋っていた召喚者もあっさりと彼女の魅力に取り憑かれたらしく。1も2もなく彼女を連れて帰ることを了承した。
もちろん、彼女には別室で今回の召喚の真実を話してある。
そのときに彼女におかしな質問をされ、召喚者の答えを伝えていた。
国の体制や通貨制度・経済規模などは、なるほど彼女の得意分野だ。さらに国民の資質や思想など幅広い分野の情報を集めては、頷いていた。
きっと、私が質問しても専門用語だらけの説明になりそうだったので敢て聞かないことにする。
最後に、王子の父親である国王がどこまで権力を持っているのかということまで質問された。これが結構重要らしい。
その昔、ストーカーの自称彼氏の父親が与党の幹事長でその権力を使い、モノにしようとしてきたことがあったらしい。この時もその父親を罠に掛けて政治家生命を抹殺したらしいのだ・・・。
そうか。
傾国の美女にもなり得るわけだ。
彼女もどうせなら、この能力を生かして国を傾け歴史に名を残したいという理由で承諾をもらった。
なるほど、ドSだわ。
彼女に比べれば私なんてかわいいものね。
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それでその後彼女がどうなったか、というと実はこのマンションに住んでいたりする。
向こうの世界は、こちらの世界と比べ10倍のスピードで時間が進んでいたらしい。彼女にとって向こうで10年暮らしたが帰ってきたのは1年後だったのだ。
偶々国王様は、王妃の大きな尻に敷かれることを是とする人物だったらしく。特に彼女に色目を使ったり、モノにしようとしなかったらしい。
彼女はその魅力を存分に発揮して、王子をゲットして結婚式を行い王太子妃になったという。
だが、そこでめでたし、めでたしで終る彼女ではなかった。
初めの1年は、その国の経済状態を調べたり、具体的に経済政策に口を出したりしていたらしい。
だがそれが受け入れられないと解ると今度は別人の名前でジャン・ジャック・ル○ーの社会契約論の出版など政治や経済に関わる思想の持ち込みを精力的に行ったらしい。
目的が傾国なのだからというよりは、彼女が大学で専攻したフランス経済史に基づいて、実証確認を行ったようだ。
運良く国王が3年目に亡くなり、彼女の夫である王太子が跡を継ぎ、彼女が王妃となった。
それから実際にフランスで一般に流布した歴史を辿り、高価なプレゼントを次々と要求して国家財政から出費させて景気を良くしようとしたり、貴族たちを快楽主義に走らせ溜め込んだ金を使わせたり、経済に明るい貴族や最新の経済思想を教え込んだ友人の子爵夫人を優遇したりしたらしい。
しかも、あの有名な名ゼリフ『パンが無いなら和菓子を食べればいい』とも言ったらしい。私も1度は言ってみたいセリフだ。
彼女は、老舗有名和菓子屋の1人娘だったこともあり、自身でも製造可能なくらいその方面では詳しく、異世界で和菓子を積極的に作らせて流行させたという。
夫の国王就任の際にお祝いに集まった各国の王子たちにも目を付けられたらしく。彼らと不倫を行うことで貨幣の流動性を高めたり、彼女を奪うために周囲の国々から戦争を吹っかけられることで戦争特需で好景気にしたり、次第に国民の反感を買う対象となったらしい。
だが、その浪費癖も綿密に計算したらしい。
某王妃と同じく、GNPからするとのわずか0.1%未満に抑えられており、夫の経済政策の失敗や彼女に反感を持つ貴族たちの浪費、そして国民の中流階級意識により生産活動が振るわなかったことが経済を疲弊させていったという。
そして、王妃になって7年と半年後、王妃である彼女の出版物と知らずにその思想に被れた民衆がついに革命を引き起こしたらしい。
常に愛人の1人として確保してあった召喚者と共に貰ったプレゼントを持てるだけ持って戻って来たのだという。
「フランスは15年も持ったのにあの国はおよそ半分の時間しか持たなかった。意外とフランス国民が我慢強い民族であることが解かったわ。」
今は、その召喚者を召使のようにこき使いながら、悠々自適の生活を送っている。
《第7話完》
悪役といえば・・・あの人ですね。でもあの名ゼリフはあの人が言った言葉ではなく別人が言った言葉だそうです。
某マンガの創作では無いようですが・・・。
創作中は月組涼○様の歌声が頭の中でリフレインしていました。
あの時代は良かった。なんといっても土日なのにフラっと大劇場に行ってチケットが買えたものな。今では、考えられないですよね。
もしかして、年齢バレバレ?
そこは詮索しないで(笑)




