第6話 召喚者は勇者パーティ -3-
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「それで何故この私を召喚しようと試みたのですか?」
私は、武器の中にあった一番切れにくそうな剣を選び、敵の勇者に突きつける。
「ち、違うんだ。これには、深い訳があってだなぁ。」
「それで・・・。」
「ダンジョンの最下層部にある宝箱のトラップに引っ掛ったんだ。」
「どういう意味なの。はっきりおっしゃい!」
「そのトラップは掛かった人間に取って一番恐怖な生き物を召喚すると言われているモノだったんだ。」
「それならば、魔獣とかが現れそうだけど、何故私なの?」
「俺に取って魔獣は獲物に過ぎない。俺に取って一番恐怖な生き物と言えば、隣国の王女であり俺の許婚でもあるセージの他ならない。あんな陰険でドSで守銭奴な奴を嫁に貰うくらいなら死んだほうがマシだ。」
何か聞き捨てられないことを聞いたような気がする。
「何よ。ソレ。私が陰険でドSで守銭奴だとでも言うわけ?」
「我はドSで守銭奴だと知っておるぞ。」
「俺も陰険でドSだと知っているが俺がドMだからちょうどいいんだ。」
オラ魔王とゴディバが裏切った。
社長・・・違うって言ってくれるのは、嬉しいけど・・・。そこで何故視線を合わせようとしないの。全然説得力が無いんだけど・・・。
「ホラ・・・。きっと名前が似ているせいだわ。セージって賢者のことでしょ。私、渚佑子って言うの。大賢渚佑子よ。」
ま、まさか私が召喚されやすいのって・・・名前のせい?そんなことは無いわよね。無いはずよ。
1回目は、勇哉の勇者召喚に巻き込まれただけだし。でも・・・武者小路勇哉・・・符合してる。気のせいよ気のせい。
これまで召喚されたのって、賢者を召喚する魔法や賢者を含む集団召喚だったような・・・。ま・・まさかね。
・・・・・・・
私が落ち込んでいると視線を合わせようとしなかった社長に準備が整ったと言われた。どうやら、いままで掛かって1つ前の召喚魔法をスタックから呼び出して反転魔法陣に上書きしてくれたようだ。
これならば、巻き戻しが実行できる。MPも社長が大半投入したので後はもう少し投入して唱えるだけの状態らしい。
「とにかく。もう帰ってちょうだい。」
「ま、待って!私は、帰りたく無いの!」
それまで黙っていた魔法使いの彼女がいきなり発言した。
「何故?」
「もう、このバカ王子のお守りなんて懲り懲りなのよ。」
彼女が言うには、学生時代から何故か虐められたらしい。ようやく卒業して魔術師協会に就職しても、四六時中付き纏うわ。権力を使い協会の寮に入り浸るわ。終いには、魔王討伐に行くからって付き合わされているらしい。
魔王討伐だけならまだしも、訓練と言いながらダンジョンに入っては、目の前で弱い魔獣たちを嬲り殺しにしたりするらしい。
特にダンジョンでは、1人突っ走るからトラップに引っ掛り通しなのだとか。魔王討伐が済んで報奨金が出たら協会の職を辞めようと思って頑張ってきたらしい。
そして、今回のトラップで、ほとほと愛想が尽きたというわけらしい。しかも、この場でこの世界に残れば、確実にこの男と縁を切れるというのが魅力だという。
まあ確かにウザそうな男だもんな。
「そ、そんな・・・俺の計画が・・・魔王討伐に成功したら、自由が勝ち取れるはずだったのに・・・。」
は・・はあん。この男、この娘に惚れているんだな。
「ご愁傷さま。せいぜい、セージ王女様を大切になさってくださいね。」
そして、この娘は、この男の想いに気付いていないらしい。こんな可愛い娘を好きだからって苛めるだなんて、ウザイを通り越してサイテイ。これは協力せねば・・・。
「わかったわ。」
社長に相談してみると、彼女をこのモデルルームの魔法陣の上から下ろして、巻き戻しを発動させればいいらしい。
私は、魔法の袋の1つに彼女の衣料品を詰め、彼女の個人結界を解除し手渡した。
「良かったわ処分しなくて。貴方の武器や装備品は換金して後で渡すわね。オラ魔王様、ゴディバ。彼女を空き部屋に案内してくれる?よろしくね。」
3人がこの場所を離れたのを確認して、勇者パーティ-1に対して最後のお別れを言った。
「じゃあ、身に付けている装備と手に持っている武器だけは、取り上げないで居てあげる。頑張ってダンジョンから脱出してね。バイバイ。」
私は、そう言って残りのMPを投入し唱えると、目の前の勇者パーティ-1の3人が居なくなった。どうやら、反転魔法陣の巻き戻しは成功したようである。
《第6話完》




