第6話 召喚者は勇者パーティ -1-
お読み頂きましてありがとうございます。
第2話のオラ魔王様が出てきます。
次は誰をだそうかな。
「貴様が首謀者か!我々をブレイブ皇国の勇者と知っての所業か?」
「ちょっ・・・」
「問答無用!」
・・・・・・・
私は、渚佑子。千葉で生まれ育った18歳。でも、昼間はマンションの管理人をやっている。
普通は、マンションの管理人と言えば、中年のパートのおばさんか、管理会社に就職した男性社員がなる。じゃ、どうして私が管理人をやっているかというと、ちょっと事情がある。
私は、異世界に召喚されやすい人間らしい。しかも高校受験・大検試験・就職面接といった大事な時にばかり、召喚されている。
幸運だったのは3度とも元の世界に戻ってこれたことと、異世界で大賢者と呼ばれるほど魔法が使えるようになったこと。
そして最も幸運だったのは、3度目の召喚に巻き込んでしまった面接官の社長に出会え、そのまま就職させてもらえたこと。
その後も幾度となく召喚され続けているのだが、その度に解呪魔法で跳ね除けている。ただこの世界では、MPはほとんど回復しない。異世界なら一晩で回復したものが1ヶ月もかかる。
つまり、解呪魔法は連発できない。しかも、寝ている間に召喚されることもありうる。
そんな窮状を聞きつけた就職先の社長のご好意により、反転魔法陣の上に建てられたマンションの管理人をやらせて頂いている。
このマンションの分譲スペースは完売なのだが、モデルルームは、目と鼻の先に建てられたままになっている。
私を召喚しようとする召喚者は、反転魔法陣で逆にこの世界に飛ばされてくる。そしてその到着場所が、このモデルルームになるようにしてある。
私にはこのマンションの管理人であると共に、このモデルルームにやってくる召喚者を排除する役割があるのです。
ピンポーン。
あのチャイムの音は、モデルルームに付けられたセンサーの音だわ。
今日もどこか異世界の召喚者がやってきたみたい。さあ、仕事、仕事。
◆◆◆◆◆◆◆
モデルルームに来た途端、勇者を名乗る集団がこちらが何かを言う前に襲い掛かって来た。
集団は4名でなにやら光る剣を持つ勇者を先頭に杖を持ちフードの様な黒い服をすっぽりと被った女魔法使い、そして長い槍を縦横無尽に振り回す筋肉ムキムキの男と反対に痩せ型だが手に持った弓で正確に矢を射てくる男だ。
どうやら私が彼らを罠にハメ、どこかのダンジョンに強制送還させられたと思っているようである。まあ、異世界人からしたらモデルルームも一種のダンジョンのように見えるかもしれない。
魔法使いは火属性が得意のようで雨あられのように攻撃が振ってくる。勇者の剣も槍使いの槍も弓使いの矢も間を置かずに攻撃してくる。
それらを水属性の魔法で防ぎながら、結界の中に潜り込む。この結界も反転魔法陣の一種である。円形に作られた結界に入ってきた攻撃魔法は、威力が殺されつつも周囲に跳ね返っていく。
これからどうすればいいのだろう。魔法は魔法陣で跳ね返せるが他の攻撃は水属性の魔法や風属性の魔法を駆使して防御するのが精一杯だ。魔法を使ってMPを消費しつつあるから、いますぐ反転魔法陣の巻き戻しは使えない。手元にはコモン・アンコモン・レア・ハイレアのMPポーションもあるが、今のタイミングで使ってもいいのか悩んでいる。
ピンポーン。
うわっ。最悪。また、私に対して召喚魔法が使われたらしい。これで反転魔法陣の巻き戻しは使えなくなった。この巻き戻しは、直前に使われた召喚魔法にしか対応しないからだ。
「よっ。やってるやってる。渚佑子さん、お元気?」
奥からやってきたのは、オラ魔王様だった。
「き、貴様は魔族?とすると俺たちは魔族に嵌められたのか?なんてことだ!」
勇者たちは、また勝手に状況を判断したようである。
勇者たちを説得して送還魔法を使い、穏便に戻ってもらうしか手段が無くなったというのに、さらに誤解が進んでいく。いったいどうすれば・・・。
「とりあえず防御していて貰えますか?味方を呼んできますので・・・。」
「わかった。『防御壁』・・・これでいいか?但し、余り長くは持たんぞ。」
勇者たちとの間に見えない壁ができたらしく。剣も槍も矢もこちら側に来ない。
「どれくらいですか?」
「うむ。30分くらいか。」
いつぞやに手土産を貰ってばかりで悪いかなと腕時計をプレゼントしたのだ。それ以来、時間の概念を覚えてくれたので楽だ。鐘半分とか言われてもさっぱりだからね。
「えっ。ダメーーーー。」
勇者たちも始めは防御壁に向かって攻撃を続けていたが無駄だと悟ったのか、今度はそこらにある家具を破壊し始めたのだ。
ここにある家具はうちの会社の備品だ。次にマンションを建てる際にモデルルームからモデルルームへの移動するのだという話を聞いたことがある。
それを破壊されてしまっては弁償させられる・・・。とにかく社長に即時報告しなくてはいけなくなったようだ。ついでに応援に来てもらえばいいか。
あとはウィクリーマンションの異世界の住人たちに召集をかけてっと。
《つづく》
投稿間隔ですが当分の間、日曜日、水曜日の週2回にします。
お待たせして申し訳ありません。
 




