第5話 召喚者への人材紹介所 -2-
お読み頂きましてありがとうございます。
実は異世界に行きたいとか魔法を使いたいという人間に対して、メールを返信してモデルルームで面接を行っている。
始めは半信半疑だった人たちも目の前で魔法を使ってみせれば納得してくれる。
もちろん、1回目の召喚の際に貰った『鑑定』スキルで目の前の人間の能力は一目見て解かる。
魔法が使いたいけど魔法を使う素質が無い人間にだけは、そう言ってお帰り願ってるが、ほとんどの人間がそれでも異世界に行きたいという人間ばかりなのである。
そういう人々には、ここのウィークリーマンションを利用してもらい。緊急の呼び出しにも備えられるようにしてもらっている。
今日在室で相手の要望を加味すると紹介できるのは、このお二方だったという訳だ。
このウィークリーマンションの利用率向上は、私のボーナスに直接跳ね返る。しかも召喚者の置いていく契約金である金貨は錬金術でプラチナに変換して私の小遣いにさせてもらう。
いまの目標はスイートホームに入れるクィーンサイズのベッドだ。ここに連れ込んだときの社長の顔を早く見てみたい。いくら鈍感でも何が言いたいのか解かるはずだ。
・・・・・・・
始めはその女性召喚者も硬直した。その後も私を希望するといい続けていたが今度は、向こうが根負けしたらしい。この召喚者も3度目だ。こんどこそ誰かを連れて帰らなければ進退問題にでも発展し兼ねないのであろう。
がっくりとしていたが、どこか吹っ切れたような表情をしている。
「解かりました。そのお二方を連れてきてください。」
ここからはウィークリーマンションの内線にも繋がっており、呼び出すのは簡単だった。
1人は10分くらいで来るといい。もうひとりは30分ほど掛かるらしい。もちろん、お二方にはライバルが居ることは伝えてある。
彼らが来るまでの間に契約金の話をする。相手の足元を見てあまり大金を吹っかけるのもどうかと思うし、異世界に行く彼らを人身売買をするようであまり良くないと思っている私は、ほんの手数料程度を申し出る。
その手数料程度の金貨も実際には、異世界に行く彼らに渡すコモンのMPポーションなどの餞別の代金である。
これは社長の知り合いの製薬会社などから無理を言って仕入れさせて頂いている。もちろん、商売として問題が無い程度の利益は上乗せしてあるが微々たるものであるし、金貨の金含有量によっては赤字になってしまう。
この金貨が手に入ることで錬金術でプラチナに変換できる元手になることが重要なのである。
もっと吹っかけられると思っていたのだろう召喚者は目を丸くしている。
・・・・・・・
ようやく、一人目の男性が入ってきた。
一応身だしなみを揃えてきたようだが格好はラフな姿だ。
「渚佑子さん。そして異世界の方、よろしくお願いします。」
一応は挨拶もできる。異世界を希望する人たちの中には、コミュ障の引きこもりも居るには居るが彼らの優先順位は余り高くない。彼らが異世界でコミュ障を克服できる保証など何処にもないからだ。
おそらく魔法の研究者でも相手が希望しないかぎり紹介することは無いだろう。それを伝えたところ、コミュ障だけでも事前に克服しようと躍起になっているらしい。メールで送ってくる文章もマシになりつつあるようだ。そこまでして異世界に行きたいらしい。
そこまでできるなら、この日本でも楽に生きていけるだろうに・・・。
「はい。よろしくお願いします。」
「あ、日本語ができるんだ。」
彼女が使った召喚魔法には、異世界の言葉が解かる魔法も組み込まれているタイプのようで反転魔法陣により、彼女は日本語が理解できるようになっている。
「サトウ君、減点されますよ。」
挨拶のところからもう面接は始まっているのだ。
「はい。申し訳ありません。」
直ぐに謝れるところをみるとコミュ障ではなさそうだ。事前の面接でもそのようなところは、見受けられなかったが予定が決っている面接などは潜り抜けられるが、突発的な出来事に対してはボロが出るタイプも居る。でも彼はそういったタイプでは無さそうだ。
「あのう鑑定魔法を使わせて頂いてもよろしいでしょうか?」
召喚者の彼女がそう言ってくる。わざわざ言わなければ使ってもよかったのに・・・。
「そうですね。お二方が揃われてから、どの程度の情報まで見れるのかお話し頂いた上で両方の了承を頂けたなら構わないと思います。」
鑑定魔法は使用者のレベルによって、プライベートな情報まで丸解かりの場合があるのだ。先に面接を受けた人間が鑑定魔法を受けていれば、後から面接を受けた人間は鑑定魔法を受けざるを得なくなってしまう。
彼女は真っ赤になり頷いてくれた。きっとプライベートな情報を覗き見してしまった苦い経験があるのだろう。
まず私から今回の召喚の目的と召喚後の待遇などを説明していく。
そして紹介する人の特色などを伝えていく。今回のサトウ君は、月150時間を越える残業こなす半ブラック企業に勤めておりなかなか辛抱強いところがある。
その後は、召喚者である面接官と彼との1対1の面接となる。もちろん、私も同席するが基本的に口出しはしない。
私の聞いている話と違ったりした場合にかぎり、口を出すことにしている。相手によって条件を変えるなどもってのほか、代わった理由が十分でないと感じれば有無を言わせず、反転魔法陣の巻き戻しにMPを投入することになる。
あくまで、私は召喚される彼らの味方であってしかるべきと思っている。まあ、召喚者が嘘をついていればどうしようもないが、異世界での経験で嘘をついているかどうかぐらい。相手の目を見ればわかるようになっている。
いまのところ、問題は無いようだ。
10分ほどの簡単な面接は終わりをつげた。
・・・・・・・・・
二人目の女性が入ってくる。
こっちは何を勘違いしているのか。キッチリと化粧をした上でブランド物のスーツを着ている。こんな格好で企業面接に行ったら、セクハラ面接官以外は相手にしないだろう。
しかも相手は、異世界の人間なのだ。
ブランドって何?それって美味しいの? だろう。
まあ格好だけ見るとキッチリしているように見えるから、サトウ君よりは良いかもしれないが、用意に30分も掛かった理由が解かった気がする。
こちらも同じように進めていく。
私から今回の召喚の目的と召喚後の待遇などを説明する。
こっちはサトウ君と違って活発に質問している。ああ彼女は帰国子女だった。あのスーツや活発な質問などは、外国で身につけたもののようだ。
あまり日本の面接官には通用しないのだが、異世界の面接官ではどうだろう。
、そして紹介する人の特色などを伝えていく。彼女は帰国子女なので外国語を覚えることは苦にしないらしい。
そして10分ほどの簡単な面接は終わりを告げる。
・・・・・・・
「ではジョウノウチさん。彼女は鑑定魔法を使いたがっています。了承しますか?」
召喚者の彼女に鑑定魔法について説明してもらう。
「僕は構いません。」
「私は嫌です。」
じつに帰国子女らしい回答だった。日本に住んでいれば先に了承している人間が居れば、たとえ嫌でも断ったときの損得を考えて、考えを変えるものである。
《つづく》
さあ、あなたが異世界の召喚者ならどちらの人間を選びますか?
誠に申し訳ありません。諸事情により投稿間隔を空けさせて頂きます。
予定では週1回水曜日18時でございます。その週に出来上がった分投稿します。
ひきつづきご愛読頂けますようお願い申し上げます。
すみません。3作品同時連載はこの辺が限界みたいです。
1作品はクライマックスに入っておりますのでこちらを完結させ次第、注力しますのでご勘弁願います。




