第1話 ロリータ王女の召喚者 -1-
お読み頂きましてありがとうございます。
連載小説ですが各話が独立していますのでどこからお読み頂いても大丈夫だと思います。
私は、渚佑子。千葉で生まれ育った18歳。でも、昼間はマンションの管理人をやっている。
普通は、マンションの管理人と言えば、中年のパートのおばさんか、管理会社に就職した男性社員がなる。じゃ、どうして私が管理人をやっているかというと、ちょっとした事情がある。
私は、異世界に召喚されやすい人間らしい。しかも高校受験・大検試験・就職面接といった大事な時にばかり、召喚されている。
幸運だったのは3度とも元の世界に戻ってこれたことと、異世界で大賢者と呼ばれるほど魔法が使えるようになったこと。
そして最も幸運だったのは、3度目の召喚に巻き込んでしまった面接官の社長に出会え、そのまま就職させてもらえたことである。
その後も幾度となく召喚され続けているのだが、その度に解呪魔法で跳ね除けている。ただこの世界では、MPはほとんど回復しない。異世界なら一晩で回復したものが1ヶ月もかかる。
つまり、解呪魔法は連発できない。しかも、寝ている間に召喚されたら、どうしようもないのだ。
そんな窮状を聞きつけた就職先の社長のご好意により、反転魔法陣の上に建てられたマンションの管理人をやらせて頂いている。
このマンションの分譲スペースは完売なのだが、モデルルームは、目と鼻の先に建てられたままになっている。
私を召喚しようとする召喚者は、反転魔法陣で逆にこの世界に飛ばされてくる。そしてその到着場所が、このモデルルームになるようにしてある。
私には、このマンションの管理人であると共に、このモデルルームにやってくる召喚者を排除する役割があるのです。
ピンポーン。
あのチャイムの音は、モデルルームに付けられたセンサーの音だわ。
今日もどこか異世界の召喚者がやってきたみたい。さあ、仕事、仕事。
◆◆◆◆◆◆◆
私が、モデルルームに入っていくとそこに居たのは、7歳くらいの少女だった。いや、幼女か。彼女は、白い髪で碧眼なのだが、幼い容姿の割りに強い目力をもっていた。彼女は、不安そうに桃色のドレス姿で立っており、私を見つけると傍に寄ってきて、こう言った。
「よ、よくいらして下さいました賢者様!」
どうやら、自分がどういう状況か解かっていないらしい。
「賢者ですか?」
「あ、申し訳ありません!国王様が直々にご説明致します!よろしかったら私についてきて下さい!」
彼女は、何処へ行くつもりなのだろう。きっと、周りが全く見えていないに違いない。
彼女は、くるりと後ろを向いたところで固まった。
「あ、あのぅ、ここどこですかぁ?」
再びこちらに向いた彼女が涙目になりながら訴えてくる。
あ、可愛い。
思わず抱きしめたくなるくらいだ。
・・・・・・・
私が召喚魔法を反転させたことにより、召喚者がこちらの世界に飛ばされてきたことを告げると必死になって召喚のいい訳を説明しだした。
彼女のたどたどしい説明を要約すると。
彼女が居た国の名は『王都・ビクター』。その異世界『イデオ』に存在する『人族』を束ねる王が住む国らしい。大陸には境界線が存在しており、それぞれの種族が国を作り治めているということだった。
まず『獣人族』では、『人狼』や『虎人』など獣の特性をその身に宿した種族であり『獣王国・パラシオン』が存在するらしい。
また『魔族』では、『魔人』や『鬼』など俗に亜人と呼ばれる種族であり『魔国・ハイネス』が存在するらしい。
そして『妖精族』では、『エルフ』や『妖精』などがいるが、彼らは国を持たず、数も極めて少ないため、小さな集落を作り生活しているらしい。他種族との関わりも持たないので、彼女は見たことがないらしい。
そして彼女が召喚しようとした『王都・ビクター』の『玉座の間』で本来、これらの説明をするはずだった王がルドルフ・カール・フランツ・フォン・ヨーゼフだそうである。
そして、目の前に居る少女がこの国の第7王女であるナリスだという。
『人族』『獣人族』『魔族』。今この3つの種族間は、かつてないほどの緊張が生まれているらしい。
特に『魔国・ハイネス』の魔王が、『人族』や『獣人族』を滅ぼそうと画策しているという。
優れた力を持つ自分たちこそが、『イデオ』を掌握し統一するのに相応しいと考えているらしい。そこで邪魔な『人族』や『獣人族』を滅ぼして、『魔族』だけの世界を創ろうとしているのだという。
このままではいずれ滅ぼされると思った国王は、何とか逆に『魔族』を滅ぼせないかと考えた。その時、古の魔法として封印されていた召喚魔法を使用することになったらしい。
《つづく》
まずは、テンプレ:幼女の王女による召喚です。
基本2000文字前後を単位として投稿とさせて頂きます。
更新時刻は毎日18時の予定です。よろしくお願い致します。
補足:「大検」いまは「高認」(『高等学校卒業程度認定試験』)というらしいのですが、一般的では無いと思いますのであえて古い用語を使用。