第69話
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必要最小限の荷物を旅行鞄につめて僕は家を出た。車は菜穂子が使うからタクシーでアパートへ向かった。アパートに戻ると、優里はバルコニーに出ていて僕を見つけると手を振った。そして、すぐにアパートの外まで走って来た。
「お帰りなさい」
「一人で大丈夫だった?」
「はい」
そう言って優里は僕の腕にしがみついて来た。部屋に戻ると既に布団が敷かれていた。
「お風呂沸かしておきましたよ。一緒に入りましょう」
いつもホテルでそうしているように、そして、それが当たり前だというように優里は言った。そして、僕の上着を脱がすとワイシャツのボタンに手を掛けた。
優里の体は少し痩せたようだ。
「そんなに見ないで下さい。恥ずかしい…」
「じゃあ、僕は出ようか?ゆっくり一人で入ればいいよ」
「ダメです。私がちゃんと洗ってあげますから座って下さい」
優里は一生懸命僕に尽くしてくれた。僕も優里の体を洗ってあげてから二人で湯船に浸かった。狭い湯船の中で抱き合うように僕たちは体を温めた。
風呂からあがると優里が缶ビールを出して来た。来た時、冷蔵庫の中は空っぽだったはずだけど…。
「どうしたの?」
「近くにコンビニがあるのよ。お風呂上がりに一緒に飲もうと思って買って来たの。他にも色々買って来たわ」
優里は缶ビールを二つのグラスに注ぐと、一つを僕の前に置いた。
「かんぱーい」
僕たちはグラスを合わせると、一口で飲みほした。
「おいしいね」
そう言って優里はいつものように笑った。そんな優理を見ていると、なんだかとても悲しくなって来た。二人でいるのにこんな気持ちは初めてだった。運命の人…。その言葉が僕の頭の中でぐるぐる回っている。僕たちはこのまま一緒に暮らすことになるのだろうか…。確かに、いつかはそうなるのかも知れない。けれど、それは今ではないようにも思える。




