第63話
63.
男たちはまっすぐこちらに向かって歩みよる。「刑事さんよ」山本さんが耳打ちしてくれた。
「先ほどはどうも」
刑事たちは山本さんに軽く頭を下げて、煙草に火を付けた。
「失礼ですが、こちらの方は?」
一人が僕の方をチラッとみて、山本さんに尋ねた。
「地元のお友達です」
山本さんが答える。
「お名前は?」
片方の刑事が手帳を見せて僕に質問をしてきた。
「安西です。安西貴志」
「あなたが?ちょうど良かった。少しお話をうかがってもいいですか?」
刑事たちは山本さんに目配せをした。山本さんは吸っていた煙草をもみ消して。喫煙室を出て行った。
「今朝がた、青山さんと携帯電話でやり取りをされていますね?どのようなお話を?」
「今から出てこられるか?と。時間も時間でしたから返事に迷っていたら電話を切られてしまいました。けれど、彼女の様子が気になったので、すぐに掛け直したのだけれど…」
「応答がなかった」
「は、はい…」
既に彼女の携帯電話の履歴は調べられているのだろう。その後、いくつかの質問をすると、男たちは出て行った。僕たち二人の関係については一切聞かれなかった。既に解かっていて聞くまでもないのか、それとも事件とは無関係なので、敢えて聞かなかっただけなのか…。いずれにしても僕が疑われているわけではないのだということだけは解かった。
家族が来ているのであれば、僕が会いに行くわけにはいかない。それに、優里の意識はまだ戻っていない。僕は一旦、帰宅することにした。
「あの…」
病院を出ようとした時、見知らぬ男に呼び止められた。
「安西さんですか?」
「はい…。そうですけど」
「青山ですけど…」
あ、青山って…。まさか、優里の!?




