第61話
61.
夜中に優里から電話がかかってきた。
『へへへ、こんな時間にごめんなさいね。何してましたか?』
優里の口調もいつもとは違う。酔っているようだ。
「寝てたけど…」
『そうですよねぇ。こんな時間ですものね。今から出てくることはできませんよね?』
時計を見ると深夜の1時を回ったところだった。菜穂子はぐっすり眠っている。僕は携帯電話を持ってベッドから出た。
「どうしたの?こんな時間に」
『無理ならいいです』
そう言うと、優里は電話を切った。僕は着替えて外に出た。そして、優里に電話をかけた。優里は電話には出なかった。
部屋に戻ると、菜穂子が目を覚ましていた。
「こんな時間にどこへ行っていたの?」
「ちょっと、タバコが吸いたくて…」
「ふーん、最近、吸い過ぎじゃない?」
「そうか?」
それっきり菜穂子は眠りについた。
翌日、仕事の合間に優里に電話をかけてみた。
『おかけになった電話は…』
念のためにメールを入れておいた。
僕は昨夜のことを考えていた。あんな優里は初めてだった。誰かと一緒に飲んでいたのだろうか…。だとしたら、それは一体、誰だったのだろう?もしかして、横井か?考えれば考えるほど不安になってきた。
仕事が終わって帰り支度を始めた時、メールが入った。
「優里!」
しかし、そこに表示された名前は山本さんだった。僕はがっかりしたのだけれど、メールの内容を見て冷静ではいられなくなった。
『まだお仕事ですか?青山さんが大変です。早く帰ってきてください』
僕はすぐに山本さんに電話をかけた。
「どういうことですか?」




