表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
優里  作者: 日下部良介
56/75

第56話

56.


 和夫から電話があった。

『今晩カラオケにでも行こうぜ!』

「突然だなあ。山本さんか?」

 和夫は最近、山本さんにぞっこんらしい。この日も彼女を誘おうとしたのに違いない。僕はその出汁にされている。今夜でもう何度目だろうか。正直、山本さんとはあまり顔を合わせたくはないのだけれど…。

『そう言わずに付き合ってくれよ。麻美ちゃんが周りの目があるから二人だけじゃいやだっていうからさ。お前もアオちゃんを誘えばいいだろう?』

 優里に会えるのは嬉しいけれど、このメンバーというのはちょっと乗り気がしない。けれど、和夫の頼みなら無下には断れない。

「分かったよ」


『貴志さんに会えるのは嬉しいけれど、山本さんと一緒なのは嫌だなあ』

 どうやら優里も僕と同じ気持らしい。

「まあ、恩を売っておけば、今後僕たちが会う時にもあいつらをダシに使えるじゃないか」

『そういう事ではなくて、山本さんを貴志さんに近付けたくないんですよ』

「やきもち?だったら心配ないよ。山本さんには興味ないから。いつも言っているだろう?僕は優里だけだよ」

『もう!そういう問題ではないんですってば』

 そんな優里を説き伏せて僕は優里にも来てもらうことにした。今にして思えば、この時の優里の心配が現実のものになるなんて考えても見なかった。


 僕が店に着いたとき、和夫と山本さんは既に来ていた。4人掛けのボックス席で二人は向かい合わせに座っていた。僕が和夫の隣に座ろうとすると山本さんが僕の手を引っ張って自分の隣に座らせた。僕は和夫の顔色を窺った。和夫は別に気にも止めていないようだった。

「青山さんも来るんでしょう?」

 と、山本さん。どうやら和夫から聞いていたようだ。

「ちょっと遅れるみたいだけど」

「そう!じゃあ、先に始めましょう」

 そう言って山本さんは僕に体を寄せてきた。僕は思わず立ち上がった。

「やっぱ、帰る」

 僕は和夫に詫びて店を出た。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ