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優里  作者: 日下部良介
52/75

第52話

52.


 優里のことを真剣に受け止めようと思い始めた頃、僕は菜穂子との関係がぎこちなくなってしまった。優里のことを菜穂子に知らないようにしなければと思い、会話の途中で言葉に詰まったり、眼を逸らしてしまうことがあった。菜穂子はそんな僕の仕草に敏感に反応した。

「あなた、青山さんと面識があるんだってね?」

 一瞬ドキッとした。菜穂子が優里のことを知っているのは、優里が菜穂子のバレーボールチームに入ったと話してくれたので知っていた。けれど、僕との接点など優里が話していなければ菜穂子に知られることはないはずだ。

「青山さんって?」

 僕はしらばっくれて聞き返した。

「あら、純子さんが言ってたわよ。Pの飲み会の時にたまに顔を出すでしょう?」

 純子さんというのは和夫のカミさんだ。そう言えば、菜穂子と同じバレーボールのチームに入っている。

「ああ、和夫に呼ばれて何回か顔を出したけど」

「でしょう!それで、あなたと青山さんはとても仲がいいと言っていたわ。確かに青山さんは美人だけど、あなたの好みではないなあと思って」

「いや、誰が誰なのか名前だけ言われても判らないけれど、特に誰かと仲良くしているつもりはないんだけどなあ」

「そう?アオちゃんも言ってたわよ。あなたのことを素敵な人だって」

 菜穂子は僕と優里とのことを責めているのではないのだということは解かっていた。

「彼女がそんなことを言うはずないよ」

 つい口走ってしまった。

「あら、よく知ってるのね」

 しまったと思った。それ以来、菜穂子と顔を合わせるのが気まずくなった。菜穂子も僕と口を利かなくなった。


 優里は僕と一緒に暮らすことを望んでいる。それならいっそ…。僕は優里に電話を掛けた。会いたいと言った。優里はすぐに来てくれると言った。

「焦らないで。貴志さんの気持ちは嬉しいけれど、そんな風にして奥さんと別れるのはよくないわ。私のことで貴志さんに迷惑はかけられないわ。だから、私に任せて」

 優里はそう言った。

 それからしばらくすると、菜穂子の機嫌が急に良くなった。優里はどんな魔法を使ったのか話してはくれなかったのだけれど。





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