第47話
47.
いつもなら電話が掛かって来るたびに、メールの着信があるたびに、優里の名前が表示されていることを期待する。
いちばん、期待していた人からの電話になんて出方をしてしまったんだ…。
「い、いや、たった今、山本さんと話をしていて…。一度電話を切ったんだけど、切際にしつこく何かを言っていたから、僕は構わず電話を切ったんだ。その直後に入った電話だったから、てっきり山本さんかと…」
『良かった。私のことが嫌いになったのかと思った…』
「うん、そんなことがあるわけないよ。ところでどうかした?」
『留守番電話に…』
「あっ、そうか…。別に何でもないんだ。ちょっと声が聞きたかっただけ」
『そうなんですか?珍しいですね』
「最近、連絡が無かったから、体調でも壊しているんじゃないかと思って」
『ありがとうございます。大丈夫ですから』
「そう、それならいいんだ」
優里の声を聞いた途端、僕は聞きたかったことが聞けなくなってしまった。
ようやく仕事も落ち着いて、久しぶりに優里を誘った。
『ごめんなさい。今日は先約があって…』
「そう、じゃあ仕方ないね。また、時間がある時に声掛けて。僕はいつでも飛んで行くよ」
『はい…』
先約ってなんだ?高木のヤツと会う約束でもしているのか?僕は優里のことが解からなくなって来た。と、いうより、山本さんにあんなことを言われて優里のことを信じられなくなっている自分に嫌気がさした。
『あの…。信じて下さい。今は言えませんけど、私を嫌いにならないでください』
「えっ?」
『私のことを疑っているのでしょう?』
「そんなことはないよ…」
『とにかく信じて下さい。お願いします』
「わかった…」
優里がそう言うのなら信じよう。僕にはそれしかできないのだから。




