第45話
45
高木のおかげですっかり白けてしまった。
「場所を変えよう。奥様方は時間大丈夫?」
真柴が言った。僕もその方がいいと思った。
「大丈夫ですよ。なんなら朝までだって…」
山本さんはそう言うと、真柴の腕にしがみついた。僕はちらっと優里の方を見た。優里はそっと頷いた
「じゃあ、決まりだ。パーッとカラオケにでも行くか」
僕たちは4人で近くのカラオケボックスに入った。さすがに朝までは居なかったけれど、終電近くまで盛り上がった。帰り際、真柴は僕たちに詫びを入れて、終電を乗り過ごしたら大変だからとタクシーをつかまえて乗り込んだ。僕たちも電車の中で誰かに見られるのはマズイから三人でタクシーに乗った。
それからしばらく優里からは電話もメールも来なかった。気にはなっていたのだけれど、僕も仕事が忙しくて帰りが遅くなることが多く、夜は帰宅と同時にベッドに潜り込む日が何日も続いていた。
そんな時、菜穂子に声を掛けられた。
「この間、高木君たちと飲んだんだって?」
僕は心臓が止まりそうだったけれど、平静を装って答えた。
「そうなんだ。真柴も一緒にね。二人とも菜穂子に会いたがっていたよ」
「そう、私も会いたかったな。でも、合コンみたいな飲み会だったんでしょう?」
「えっ?」
「隠しても駄目よ。高木君から全部聞いたんだから」
「全部って…」
「あら、なんかやましいことでもあるのかしら?」
「そんなことあるわけないだろう」
「そうよね。今度、合コンなんかじゃなくて普通に飲みに行くときには私も誘ってよ」
「ああ。分かったよ」
高木がどこまで菜穂子に話したのか気にはなったけれど、今の菜穂子の様子では優里とのことは聞かされていない様だったのでひとまずは安心した。安心したら急に優里のことが気になってきた。そこへ携帯電話に着信が入った。優里?いや、表示されたのは山本さんの名前だった…。