第42話
42
僕にとって優里は特別な存在。出来るものならみんなに自慢したい。だけど、地元の仲間には隠しておかなければならない。それがなんとももどかしい…。
真柴から連絡があったのはそんな時だった。
真柴は僕が大学の頃から付き合っている友人の一人だ。菜穂子のこともよく知っている。そんな友人から久しぶりに飲みに行こうと誘われた。
「元気か?俺、最近、離婚したんだ。それで、女なの子たちでも読んでパーッと騒ぎたいなと思ってさ」
「そうなのか?そりゃあ災難だったな。それで、メンツはどうなんだ?」
「それがさあ、さっぱりなんだよ。お前、菜穂子ちゃんでも連れて来てくれると嬉しいんだけどな」
「女の子たちとパーッと騒ごうってのに女房を連れて行ったってしょうがないだろう」
「お前にしちゃあそうだろうけどな。そもそもその女の子がさっぱりだからお前に頼んでるんじゃないか。お前、相変わらずモテるんだろう?何人か誘って来てくれよ」
なんて無茶な話を振って来るんだと思った。その時、頭の中に浮かんだのが優里だった。僕は優里に事情を話してみた。
「と、いう訳なんだけど。どう?」
「私は構わないけれど、それだと、その真柴さんって人にとっては気晴らしにはならないんじゃないかしら?」
「それもそうか」
「ねえ、山本さんも誘ったらどうかしら?」
「えっ!」
「彼女をその真柴さんって人とくっつけちゃうんですよ。そしたら貴志さんにもちょっかいを出さなくなるかもしれないじゃないですか」
「ちょっかいって…。そんなに気にしているの?僕は大丈夫だよ。優里以外の女性には興味が無いから」
「だとしても、嫌なんです。本当は奥さんといるところだって見たくないし…」
「分かったよ。上手くいくかどうかは判らないけれど、取り敢えずそうしてみるよ」
山本さんはあっさりOKしてくれた。週末、僕は優里と山本さんを連れて真柴が待つ店を訪ねた。




