第27話
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特別な関係…。確かに僕と優里は特別な関係なのだけれど、まさかそれを正直に他人にいう訳にはいかない。けれど、僕たちの関係を山本さんは疑っている。こういう場合、まるっきり否定するのはかえって怪しまれる。
「青山さんって、僕の好みなんだよなあ。多分、青山さんも僕のことを好きなんじゃないかな?そういう意味では普通の知り合いよりは特別な関係なんじゃないかな。まあ、僕の妄想みたいなところも含まれているんだけど」
僕はそう言って優里に目配せをした。優里の表情が変わった。僕の意図をくみ取ってくれたようだ。
「いつも奥さんが安西さんのことを自慢しているから、どんな人なのか気にはなっていましたよ。それで、会ってみたらやっぱり素敵な人で…。“好き”っていうのはちょっと誤解されるかもしれないけれど、安西さんのことはみんな好きだと思いますよ。山本さんも“いい”と思いますよね?」
優里は話を僕たち二人のことから山本さんに振った。
「そうよね。うちは旦那と歳が離れているから、安西さんみたいなイケメンでお金持ちの男の人が身近に居たら、こんなおばさんになってもキュンとしちゃうわよ」
「お金持ちって…。まさか、和夫が言ったことを真に受けているんじゃないでしょうね」
「あら、でも、先日だって安西さんが全部払ってくれたじゃない」
「えっ!先日って?」
優里の表情が険しくなった。まずい展開になった。けれど、後ろめたいことは何もない。
「ああ!Pの飲み会の時よ。青山さんは途中で帰ったから知らないだろうけど、安西さんが帰る時にポンと一万円出してくれたのよ」
僕はてっきり、この間、二人で会った時のことを言うのかと思った。僕が安心した表情を浮かべているのを横目に見て山本さんは意味ありげな笑みを浮かべた。なんだか嫌な予感がする。
「そうなんですか?じゃあ、私も最後まで居ればよかった」
安心した表情をしたのは優里も同じだった。けれど、同じ表情でも僕と優里の、ものとでは意味合いが違う。
「まあ、今日はいろいろお話もあるみたいだし、お邪魔しちゃ悪いから失礼するわね」
山本さんはそう言って席を立った。
「気を付けた方がいいよ…」
優里が言う。
「山本さん、完全に貴志さんを狙ってるよ」




