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優里  作者: 日下部良介
23/75

第23話

23


 その後も同じ番号で着信があった。僕は敢えて出なかったけれど、菜穂子が不思議そうに見ていた。

「出なくてもいいの?」

「知らない番号だし、面倒くさいよ」

「そんなこと言って、また、夜中に出て行くんじゃないの?」

「それとこれとは関係ないよ。あれは和夫辺りが酔っぱらって誘ってくるんだから仕方ないんだ」

「でも、履歴が残ってないじゃない」

「履歴って…」

「見られてもいいように消してるんだろうけど、出かけた時の前後の履歴がすっぽりないでしょう。それって、ヤバイのを自白してるのと同じよ」

 なんてこった。優里とのやり取りは直後にすべて消している。優里がそうして欲しいと言ったからだけど正解だった。ヤバいと思われたのは痛いけれど、相手が優里だとは知られなかった。

「考えすぎだよ」

「まあ、どうでもいいけど…」

 その時また携帯が鳴った。今度は和夫の名前が表示されていた。

「貴志か?ちょっと来ないか?麻美ちゃんと一緒だから」

「気が乗らないからやめとく。それに二人の邪魔はしたくないから」

 僕はそれだけ言うと電話を切った。

「あら、出かければいいのに」

 テーブルに頬杖をついて僕の顔を見上げている菜穂子は妙に色っぽい。こういう顔で見つめられたら、たいていの男は惚れちゃうんだろうな。僕もそうだったから…。


 一目惚れだった。

 大学のカフェテラス。空いている席がそこしかなかった。

「そこ、いいですか?」

 テーブルに両手で頬杖をついた少女が上目使いで僕を見上げた。ストレートの長い髪にきりっとした二重の目。少し厚めの唇。アヒルの様に唇を尖らせながら彼女は言った。

「ダメ!」

 彼女はにっこり笑った。僕は一瞬で心を奪われた。





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