第22話
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「どうして会ったりしたんですか?」
山本さんとのことを話した後の優里の第一声だ。
「もう、会うつもりはないから」
「貴志さんにその気が無くても、山本さんはもう、自分の彼氏くらいのつもりでいますよ」
「そんなわけはないだろう…」
「甘いです。まさか、私のことを話したりしていないですよね?」
「ん?どうして?」
「私、知らなかったんですけど、貴志さんって、ナオさんの旦那さんだったんですね?以前にPTAの役員をしていた人たちの間では有名人だったみたいじゃないですか」
「菜穂子を知っているの?」
「同じバレーボールのチームなんですよ」
「へー、そりゃ奇遇だねえ」
「何をのんきなことを言ってるんですか!昨夜、一緒だったんですけど、浮気してるんじゃないかって言ってましたよ…」
思わぬところで縁があったもんだ。「気を付けた方がいい」僕が優里に行ったことだけど、こっちも油断していたら、えらいことになるかもしれないな。なにしろ、菜穂子は嫉妬深い。優里に迷惑が掛かったらシャレにならない。
「山本さんは口が軽いから、貴志さんが自分以外の人と付き合っているなんて知ったら、有ること無いこと言いふらして歩くような人ですから。私、面倒には巻き込まれたくはないですからね」
驚いた。和夫はよくそんな女と付き合っていられるな…。まあ、もう、彼女と二人で会うことはないだろう。
「大丈夫だよ。優里のことは誰にも言ってないから」
「それならいいですけど」
その後、暫くは山本さんからも優里からも連絡はなかった。山本さんのアドレスは既に削除してある。
「パパ、携帯なってたよ」
菜穂子に言われて履歴を確認した。登録してあるものではない番号だった。嫌な予感がした。
「かけ直さなくてもいいの?」
「知らない番号だし」
「ふーん」