第19話
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気にしていないと言ったのはウソだった。やっぱり気にはなる。昔からの知り合いだとは言うけれど、あの横井ってヤツの優里に対する態度は普通じゃないと思った。
「シャワー浴びてきますね」
「そのままでいいよ。ちょっと話をしようよ」
僕はソファに腰を下ろすと優里にも座るように促した。優里は向かい側のソファではなく、僕の横に腰を下ろして甘えるように体を寄せてきた。
「もしかして、横井さんのことを気にしていますか?」
「気にしているのは優里の方だろう?どこか後ろめたいことがあるんじゃないの?だから、わざわざ席を外して僕を呼んだんだとおもったよ。それで、こんなところに誘って僕の機嫌を取ろうとしているのではないのかな?」
「そんなことはないですよ。それはさっきは少し焦ったけれど、せっかく貴志さんに会えたんだから二人きりになりたかっただけですよ。ここへ誘ったのは私がしたかったから…」
優里の携帯が鳴った。ディスプレイを見て相手を確認した優里が立ち上がって僕のそばを離れた。
「…。はい、だいぶ落ち着きました。…。いえ、今日はもう休みます。…。えっ?違いますよ。今日が初めてですから。…。ごめんなさい。もう、切ります」
電話を切った優里はまた僕の隣に腰を下ろした。
「横井ってヤツから?」
「はい。私を疑っているみたいです。前に貴志さんと一緒に居るところを見たことがあるって。それでまた二人で会ってるんじゃないかって」
「するどいね。彼は本当に優里のことが好きなんだね」
「そんなことはないですよ」
「それは優里がそう思っているだけだよ。こんなところまで追いかけて来るんだからね。それに、男ってのは例外なくヤキモチ焼きだから」
「貴志さんも?」
「そうだよ。だから横井ってヤツが優里の体をベタベタ触っているのを見たらいい気はしないな。でも、僕は人前であんなことは出来ないから、ある意味、羨ましくも思うけどね」
「そうなんですか?意外ですけど。でも、横井さんは逆に私を女として見ていないからああいう風にするんですよ」
「僕には“こいつはおれの女だから”っていうのを僕に見せつけていた様に見えたけどね」
「でも、私は貴志さんだけですから」
「運命だから?」
「はい!」