第18話
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僕は席を立つと一旦外に出て電話の受話ボタンを押した。
「青山です。そこ、抜けられますか?」
「ああ。大丈夫だろう?どっちみち僕は最初から部外者なんだし」
「今から、この間連れて行ってもらったお店に二人で行きたいんですけど、いいですか?」
「具合は?」
「バカ!そんなのウソですよ」
「まあ、そうだろうね。すぐに出るよ。優里はどうする?先に行ってる?」
「一緒に行きたいです。高速道路の下あたりで待ってますから、タクシーで拾ってください」
「了解!」
店に戻ると「菜穂子から呼び出された」と言い、一万円札を置いて店を出た。大通りに出て店から見えなくなった辺りでタクシーを拾った。行く先を告げて途中で一人拾っていく旨を説明した。そして、高速道路をくぐった辺りで優里が待っているのを見つけた。
「すみません。そこで止まって下さい」
僕はそこで優里を乗せた。
「びっくりした!どうして貴志さんが居るの?」
「和夫に呼び出されたんだよ。和夫とは前から付き合いがあってね。よく一緒に飲みに行くんだ」
「そうなんだ…。ねえ、気が付いた?」
「横井ってヤツのこと?」
「そう…。私たち何でもないから…」
「ん?別に気にしていないよ。可愛い優里にみんながちょっかい出したくなるのはよく解かるもの」
「そんな…」
そうこうしているうちに、タクシーは店の近くまで来た。僕はタクシーを止めて料金を払い優里と一緒に外へ出た。
「あの…」
「どうしたの?」
「お店じゃなくてもいいですか…」
優里はそわそわしながら言ってきた。目を向けた先には見慣れたネオンが光っていた。