第17話
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優里は横井の隣に座った。その奥の座っている僕には気が付いていないようだ。和夫が改めて乾杯の音頭を取った。みんなで一斉にグラスを合わせる。その時、初めて優里が僕に気が付いた。優里は一瞬、戸惑った表情を浮かべた。
「あ、そうだ。アオちゃん、こいつ俺の友達。今日のスポンサーだ」
「えっ!そうなんですか。ご馳走様でーす!」
和夫が僕を紹介した後、即、食いついて来たのは横井だった。優里は戸惑った表情をして僕から眼を逸らした。
どうやら今日のメンバーは僕以外にはこの4人の様だ。PTAの会合が終わって、一杯やろうということになったらしい。僕だけが場違いの様でもあるけれど、仕切っている和夫に異論を唱える者は居なかった。
見る限り、和夫=麻美、横井=優里という図式が出来上がっているようだ。和夫は殆ど麻美とだけ話をしている。横井も優里にやたらと声を掛けている。
「なんだよ!アオちゃん今日はノリが悪いなあ。具合でも悪いのか?」
横井が優里の肩に手を置いて突っ込んでいる。
「ええ…。ちょっと…。ごめんなさい!私、今日はこれで失礼します」
優里はそう言うと席を立った。会費を払おうと財布を取り出すと、和夫が言った。
「いいよ。一杯も飲んでないんだし」
「でも…」
そう言って優里は僕の方を見た。
「ああ!こいつに気を遣ってるの?さっき、スポンサーだと言ったから?だったら大丈夫だ!こいつ、金持ちだから」
和夫が自慢げに言う。優里はもう一度、僕の方を見ながら申し訳なさそうな顔をして「じゃあ」と言って店を出た。
優里が帰った後はしばらく僕の話で盛り上がった。和夫が僕のことを金持ちだなんて言ったから。中でも、麻美さんは僕に興味津々といったような態度でやたら絡んでくるようになった。それを見ていた和夫が僕に向かって真顔で言った。
「貴志、俺の麻美ちゃんには手を出すなよ」
「何を言ってるんですか!和夫さんは」
ふーん。二人はそういう仲なんだ。言われるまでもない。麻美さんは僕の好きなタイプではない。そう言えば、この横井ってヤツ、確か、優里が話していた飲み友達ってヤツじゃなかったか…。そんなことを思っていると携帯電話が鳴りだした。優里からだった。