第13話
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「15も歳が離れているのよ」
優里が言った。ご主人との歳の差のことだ。22で知り合った時、彼はまだ若々しく、同年代の男性に比べて大人の頼りになる男性だったのだという。
「歳が離れていることについては特に不満があるわけではないの。主人そのものが嫌なの」
「いつからそうなの?結婚した時は愛していたんだよね?彼の子供を産んでいるんだから」
「子供は可愛いわ。でも、主人のことはダメなのよ。子供が生まれた後からかな…」
優里の話を聞いて僕は「なるほど」と思った。
以前、“恋愛脳”について書かれた本を読んだことがあるのだけれど、その本によるとこういう事なのだという。
女性が結婚相手に望むのは子孫を生き延びさせるための遺伝子なのだそうだ。従って、自分にない遺伝子を持った男と結ばれるように脳が勝手に策略をめぐらすのだと。そこには一緒の暮らしていくための相性などは考慮されないのだという。男性の脳とは根本的に造りが違うのだと。
妊娠・出産・授乳が一段落すると女性はまた違う遺伝子を求めるのだとか。通常は理性でそれを乗り切るのだけれど、そうでない場合、離婚するケースが多いのだという。“七年目の浮気”というのは知り合って七年目がちょうどそういう時期なのだからだそうだ。
優里も今のご主人と知り合って、ちょうど七年目くらいで気持ちが変わったようだ。
優里にそんな話を聞かせた後で、僕は聞いてみた。
「優里は僕を運命の人だと言ったけれど、何年かしたら今のご主人の様に嫌になってしまうんじゃないの?」
「そういう事なら大丈夫!貴志さんとは私が一緒に居たいだけ。子供が欲しいとは思っていないから」
「けれど、セックスは子供を作る行為なんだし、それを求めるのはそういう事になるんじゃないの?」
「そうじゃないわよ。貴志さんを喜ばせてあげたいからよ。男の人は好きでしょう?セックス」
そう言われると、返す言葉が無い。確かに、優里の体は魅力的だし、そのせいで僕の心は優里に奪われつつある。まさに彼女の“思う壺”なのかもしれない…。