インターホン ―招かざる訪問者―
よう動画であるやろ、インターホン鳴って外出たら、誰もおらんってやつ。
あれな、ワシほんまやと思うねん。
さっきな、家帰って、インターホンのランプついとるのに気づいてん。
見てみたらな、
「首から上が映ってへんヤツ」が映っとってん。
びっくりしたで。
まぁ、たぶんやけど、
やたら背ぇ高いヤツやったんやろな。
カメラの死角に、頭が入ってしもたんやと思う。
……でもな、怖いのはここからや。
先月のことやねんけどな。
三月十七日、十四時三十一分。
知らんオッサンが来とったの、思い出してもうたんや。
なんで思い出したかって?
そらな、強烈なサル顔やってん。
黒目だけがな光って……じーっと、こっち見つめとんねん。
あんな印象残る顔、
忘れる方がおかしいやろ。
それでな、もう一回見直そう思て、
インターホンの記録、さかのぼって探したんや。
……おらんねん。
オッサンの画像、どこにもないねん。
全部見たけど、おらん。
どこいったんや、あのオッサン。
ワシな、変なクセで手帳にも書いとるんや。
せやから、もう一回ちゃんと調べてみてん。
……やっぱり、おらんねん。
このインターホン、古い順に上書きされるはずやねん。
せやのに、あの日より前の画像は、ちゃんと残っとる。
三月十七日、十四時三十一分だけが、
まるで最初から存在せえへんかったみたいに、
ぽっかり消えとるんや。
……あれ、幽霊やったんか。
いや……それより、もっと嫌な想像してまうねん。
もしかして、もう家の中に入り込んどるんちゃうかって。
このインターホンの録画データな、
消そう思たら「家の中」から設定いじるしかないねん。
……ほな、誰が消したんや。
もし今もどっかに潜んどるとしたらやで。
風呂入るときも、
トイレ入るときも、
寝るときも――
すぐ横におったら、たまらんで。
最近な、ラップ音も増えてきとるんや。
「パシッ」って音に混じって、
寝息みたいなんも聞こえてくるねん。
ワシがこうしてPC開いて、
キーボード叩いとるとき――
あの日、消えたはずの「やつ」がな、
すぐ後ろで、聞いとる気ぃしてならんのや。
……嘘みたいやろ。
でもな、これ――ほんまの話やねん。
【了】




