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1夜 豚は踊る。処刑前夜に~プロローグ~

覗いて下さりありがとうございます。

豚の言葉が汚いので苦手な人はお気を付けください。



暗闇の地下牢。

舞い散る埃が僅かながらの蝋の火を吸い込む。


薄明かりにぼんやり浮かぶ床。そこには折り重なった赤黒いシミが絶叫を内包し、吐瀉物と体液が石畳に散らばって乾いた跡を残す。

その痕跡は形容し難いすえた匂いとなって香を放つのであった。


始発前のゴミを下水で洗ったんじゃねーかってぐらいクセぇ。


つか、ここどこよ。

鉄格子嵌ってっけど……俺パクられた? 

二日酔い、じゃねぇ感じなんだけどな、コレ。


サツは無しにしても、最悪、ハメ外しすぎて黒服に拉致られたか?

昨日の最後……あー、思い出せねぇ。


ぼったくり系にハメられねぇように、ホスト上がりの店しかいかねぇんだけどな。ミスって本職の……クソが!

テキーラを流し込んだあたりで記憶が途切れてらぁ。


「つか誰かいねぇの?もしもーし?」


絶望が支配する闇の中「カチャン」と金属音が跳ねた。

ゆっくりと進む足音は、堅牢な石壁に埋め込まれた、影が佇む鉄格子の前で止まる。


「うるさいぞ豚」


響き渡ったのは一切の抑揚を無くした声。

鈍く光る銀のプレートを纏い、人を殺傷する為だけに作られた鋭い先端が、乱暴に牢の鉄格子を叩いた。


「もう一度騒いでみろ。今直ぐお前の腹を抉ってやる。どうせ明日には死ぬんだ。無駄な足掻きはやめて人生を悔いてろ」


知らねぇ甲冑野郎は親指を立てて首元をスライド。売掛が払えない新人を詰める、そんな目つきをして消えるご丁寧さ。


ーーっんだよアイツ。


つか、足音がブレてんな。

足が悪りぃなら黙って座ってろってんだ。怪我してんのか知らねぇが、ここにいる時点でぜってぇ職場で嫌われてるパターンだわ。


そもそも……やり過ぎだろ。

確かに昨日は記憶飛ばすまで飲んだけどさ、

処刑? 首チョン? 冗談キツいわ。


もっとマシな死に方つうのがさぁ……。


いい女とよろしくやって、「あー最高だった」って笑いながら消えるのが男ってもんだろ。

そんで最後の頼みぐらい普通、聞くんじゃねーの?


ーーこのままじゃ、やべぇなガチで。悪ふざけにしちゃあ出来すぎてる。アイツの目、マジでやったことある奴のソレだわ。


んなこと考えてたら、ビルボード全部点灯したような爆光が、ボロい独房の隅々までブチ抜いた。


「クソッ、目があああああ!!」


視界が真っ白に焼けて、イライラしながら瞬きしてると、ど真ん中に「ワシ見参」とか抜かす、最高に場違いな女が立ってやがる。


「ばかかお前!……え、なに、コスプレ?神社のキャンギャル? どうでもいいけどストロボみてぇに光ってんじゃねーぞ」


耳と尻尾……胸元ばっくり開いて和装してっけど、コンカフェ嬢? 知り合いの悪ふざけか?


「うるさいのう。ワシの姿で目をつぶせ小僧が」


玉の声音が転がる。

天上の玉体が地上に顕現し、女神の神意が仄暗い牢の闇を押さえつける。


ーーウゼェー。


「つか、お前何?急になんなん?」


「ワシか?ワシは見た通りの神さんじゃ」


「は?どう見ても、コスプレもんのーーいっでぇなテメェッ」


神速の一線は音を鳴らすよりも早く頭に飛ぶ。

薄く目を開けたその眼には、金の光を宿し、ただ静かに理を見抜いた。


どっから取り出したんだかデカい扇子で叩かれた。


ーー自称神様の雰囲気あんじゃん。目の奥が光ってるけど最新のカラコンはすげぇな。


「お主ほーっんと、バカじゃのう。そんなんでは明日には死ぬのう。のうのう?間違いなく死ぬじゃろうて」


「死ぬ死ぬうっせぇな。つか、何コレ?マジどいう状況?」


嬢が……はぁ、とため息を吐いて言った。


「お主は明日処刑されるんじゃ。しょ・け・い」


「処刑?何言ってんだお前。ちょっとー、兄さーん。ヤバめの嬢が沸いたんだけどー!」


ーー動かないじゃんアイツ。つか、微動だにしねぇけど。


さっきの態度Lの甲冑野郎がこっち見たまま固まってる。

目の焦点がホラー入ってるって。


神が織りなす超常なる力が支配する空間。

常識を隔絶した神技に支配された生命は一切を知覚する事なく静止する。


「止まっとるから意味ないぞ?」


「止まってる?」


「そうじゃ。時間を止めてるんじゃ」


「……流行の時間停止ものーーっでぇ、いちいちどつくな!」


「ちょっとは黙っとれ戯けが。いいか、お前には時間がない。明日には処刑されるじゃろう」


神様の言う通りなら明日死ぬらしい。

そんなの普通に拒否るでしょ。


「生き残りたいならワシを楽しませてみぃ」


「は?楽しませる?裸踊りでもやりゃ良いのか?」


「バカか。コレじゃコレじゃ。歯ぁ食いしばれよ小僧」


「な、なにすんーー」


嬢がオレの頭に手を乗せると、ショート動画みてぇな映像が脳味噌に流れた。


「があぁぁぁああぁ!」


「耐えろよ?こんなとこで壊れてしもうたらつまらんからのう」


割れそうになる頭に知らない奴の記憶が入ってきやがった。


そいつの過去や、吐いた言葉、家族の記憶ーー今まで生きた全部の記憶が。


流し込んだのは人の魂。

一体一魂の摂理を曲げ、混ざり合い膨張し、そして残るは白黒を反転させた醜く肥え太った畜生の姿。


「おぅ、終わった終わった。どうじゃ?生まれ変わった気分は」


「本当に最悪だ。テキーラ一樽を飲み干した次の日のようだ。……ん?これ、は」


背も縮んで体が重い。

ていうか明らかにクソデブになってんじゃん。

声も違げーしどうなってんだこりゃ。


「貴様何をした!」


お、俺の割れた腹筋がミシュランマンになって……。

めっちゃ短足だし、サルエルぐらいしか履けなくね?


「別の人間の記憶、それに体。それをお前にプレゼントしたんじゃ。どうじゃ?嬉しいじゃろ?」


「……!」


「その体の持ち主はのう、素行が悪く身分を傘に着て、悪さばっかりしておった悪垂れじゃ。その事が原因で明日処刑される予定なんじゃな〜」


「何故こんな事を」


予想外すぎてビビリると嬢の顔がバリキャリ女ナンパ失敗した時と同じになった。


「忘れたとは言わさんぞ?この神である玉体を、柔らかいワシの桃尻を、揉んだじゃろうがぁ!」


尻を揉んだ……?

そんな記憶ーーあるわ。


確かバーをハシゴしてテキーラ片手に神社前を通った時だ。

女が尻からファーをぷらぷらさせてたから、つい手が伸びちまって。

最悪……やったわこれ。


「そんな、冗談ではないか。少しばかり蠱惑を抑……っん!少し、蠱惑……」


ーーなんだぁ! 言いたい事が、言葉にならねぇ。どうなってんだ、こりゃあ!


「ふん、その醜い姿で精々無様に駆け回れ。そして楽しませろ。いつでも、天からお主のことを覗いておるからのう。では達者でな」


「ま、待てくれ!」


シャンパンの泡みたいに弾けるとーー神様は俺の目の前から消えちまった。

っんだよっコレ!

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