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2.

 財力と権勢を誇示するかのように立派で豪華な村の集会所にある、重要な来客向けの貴賓室と思われる広くて重厚な雰囲気の一室に案内されてから、かなりの時間が経過した。


 大規模な魔物による襲撃を粉砕し、返り血や粉塵などの汚れを優秀な魔術師であるエイプリルさんがサクッと術で浄化した後、旅の再開に向けた準備を進めていた俺たちは、村の顔役の一人らしい老婆から声を掛けられ、村の中へと入った訳なのだが…。


 歓待の高級そうな料理や飲み物など供された後、村の顔役と思しき老婆は、どうぞお寛ぎ下さいと丁重な態度で告げて退出。 

 部屋には給仕役の若い女性が何名も控えてはいたが、俺たちが何を聞いても、曖昧な笑みを浮かべて畏まるばかりで埒が明かない。

 誰一人として今後の予定を何か聞かされていた者は居なかったようなので、結局は仕方なく、飲食物や食器類の片付けが終わったタイミングを見計らい、村の女性の皆様には退出して貰って現在に至る。


 珍味や高級食材の使われた料理の一つ一つに感嘆し、口当たりの良い高級酒を飲み比べて堪能した、朴訥な美少女剣士であるアーヤさんが敢えなく撃沈。

 すると。甲斐甲斐しくお世話をしつつ豊富な知識を満面の笑顔で披露していたゴスロリ少女のエイプリルちゃんが、真顔へと戻った。


 俺は、二人から少し離れて美味な食事を頂きながらチビチビと高級酒を舐めながら、周囲を警戒しつつも、ぼんやりこの旨い酒を持ち帰れないものかと思案していたのだが…。


「さて。情報収集が、必要ですわね」

「...」


 うん。やっぱり、ここは、小間使いたる俺の出番、だよね。

 何となく、そんな気がしていたんだよなぁ。


 はぁ、仕方ない。

 取り敢えずは、高価な酒瓶の行く末を愚考するのは中断し、周囲の散策と洒落込みますか…。


 トホホな俺は、お嬢様で上から目線なエイプリルちゃんによる檄が飛ばされることを予測し、身構えた。

 のだが…。


「むふ、ふふふ。今こそ、諜報の魔術の出番、なのよ」


 へ?


「諜報の魔術…」

「そうよ。凄いでしょ!」

「は、はあ」

「何よ、感動が薄いわね。魔術で、こっそり、この村の様子を探るのよ!」

「...」


 想定の埒外な発想に、俺のリアクションがコマ落ちする。

 けど…。


「はあ。それって、単なる盗み聞きでは…」

「違うわよ。失礼しちゃうわね!」

「あ、いや」

「そんなショボい代物ではなくてよ!」

「...」


 きゃんきゃん、ぴいぴい。

 ぎゃいぎゃい、がやがや。

 ぷんすかぷんぷん。


 俺に怒って一通り罵倒すると満足し、なにやらゴソゴソした後に…。


 エイプリルちゃんが、空に向かって一言放った。


「へぇ~い、シリちゃあ~ん!」

「は?」


 って。何じゃそりゃ?






 本人以外に見えていない架空の人物と会話をしているイタイ人。

 ってな感じで、優秀な魔術師であるゴスロリ少女のエイプリルちゃんが、虚空に向かってこの村の様子を探るように指示をした。


 そして。暫く、待機。


 そのまま待つこと、数分間。

 ホケっと村の中心部の方向を眺めていたエイプリルちゃんが、何かに気付いてシャンとなる。


「あら、もう分かったの?}


 嬉しそうに微笑み、また何やらポツリと唱える。

 と。虚空から、巻かれた羊皮紙が一枚、出現し。エイプリルちゃんの右手に、ガシッと掴まれる。


 その羊皮紙を、広げ、ニコニコとその紙面を見るエイプリルちゃん。


 すると…。

 羊皮紙の真っ白だった紙面にスッと黒インクによる文字が現れ、箇条書きで簡潔に纏められた報告書が出来上がるのが見えた。


 いや、まあ。俺の視力では、流石にこの距離でその文字までは読めないが...なに、これ?


 おい、おい。まさか、AIか?

 シリって、確か、リンゴ印のスマホに搭載されたAIアシスタントの名前、だったよね?


 むむむむむ。

 エイプリルちゃんって、実は…。

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