5.
人力車の旅は、長閑な草原をポテポテと進んで行く。
世紀末風の味付けがされた中世ヨーロッパ的な世界を象徴するかのような一連のイベントは、終幕。
どうやら、殺風景な荒野や草原を進む単調な旅が戻ってきた、ようだ。
と、思った途端に...何故だか、嫌な予感。
というか、不穏な気配。
んんんんん?
前、ではないよな。
左右にも、特に異変は無さげ。
むむむ。後ろか?
後方を振り返り、じっと目を凝らすと…。
うん。砂煙が立っている、ような気がする。
おおおおお?
ドドドドドッって感じの音が...時間差で、聞こえて来た。
ドッブラー効果付きで急速に接近してくる、よね。
俺は、お嬢様お二人を乗せた雅な人力車をそそくさと移動させ。
少し先の街道脇にあった退避スペースへと、速やかに移動。
そして。そのまま待機。
暫し待つと…。
「どけどけどけぇ~」
ドドドドドドドッ~。
俺たちの真横を、騎馬に乗って重武装した厳ついお兄さん達の集団が、疾走していく。
うん。デジャブだね。
あんど、俺、偉い。学習できる男、なのだ。はっはっはっはは。
街から徒歩で一時間程の位置にある、街道脇の小休止スペースのちょっとした広場で、俺たちは、砂煙を盛大に立てて走り去る騎馬の一群を見送るのだった。
広大な草原に続く、延々と続く古びた街道。
緩やかなカーブ、なだらかな傾斜。
小規模な林や大きな岩を迂回し、険しくはない丘を越え、続く街道。
俺は、稀に遭遇する微妙なカーブの長めな坂道をやっと登り切り、ほっと一息。
前方に開けた眺望を、感慨深く眺め…。
道の真ん中に、幼女が三人。
ん?
道の真ん中に、幼女が三人。
うん。
幻覚じゃない、ね。
道の真ん中に、幼女が三人。
薄汚れて貧しい身なりをしているがハッと見てしまう程に容姿の整った美幼女が、三人。街道のド真ん中で、肩を寄せ合い、座り込んでいた。
「あわわわわ、美形のロリ少女が…」
奇声が聞こえて振り返る、と。
そこには、両手を前に出してアワアワし、口の右端から涎が...な姿の、エイプリルちゃんが居た。
うん。変態がいる、ね。
俺は、一旦その光景は見なかった事にして、前に向き直り、改めて前景を確認する。
何度見ても道の真ん中に存在する幼女たちは、三人とも、着衣や見ためはボロボロだった。
怪我とか、してないよね?
慌てて駆け寄り、俺が介抱しようとしたら…。
「イエス!ろりーた、ノー!たっちぃ~」
と、ゴスロリ衣装で完全武装した美少女なエイプリルちゃんが、盛大に吠えた。
「男は、ロリっ子に触れるなぁ!」
「へ?」
「イエス・ロリータ、ノー・タッチ。これは、人類普遍の真理なのよ!」
「はぁ…」
「美幼女に近付くな、この変態!」
「えぇ~」
人類普遍の真理かどうかは置いておくとしても、変態は俺ではない、と思うのだが…。
俺が幼女たちの前に跪いた状態で緊急停止していると、エイプリルちゃんが、ボソリと何かを唱え。
それが耳に入って俺の脳が認識した、途端に。
美形な幼女たちから汚れた感じがキレイに抹消され、ふわふわ宙に浮いて、ふらふらと強制移動した。
そして。
美少女剣士なアーヤさんとゴスロリ美少女なエイプリルちゃんの膝の上に、美幼女が三人、こじんまりと収まっていたのだった。




