4.
力こそ正義。
勝者こそが真であり、力が全て。
うん。中途半端に友愛や博愛の思想に馴染んでしまっていると、受け入れ困難な考え方ではあるよね。
けど、まあ。生命の危機に満ち溢れ、死と隣り合わせの日常を過ごし続けていると、然程の違和感は無くなってきたりする。
腕力、権力、経済力。
どのような形態であれ、相手を強引に捻じ伏せられる力を、保持し揮えれば良い。
のだが、まあ。腕力や魔術など暴力として物理の力を目に見える形で行使するのが、手っ取り早い示威行為になるものの、それが全てでも無いんだよなぁ…。
まあ。兎にも角にも、生きて行くには何らかの力が必要なのが、この世界、なのた。
が、しかし。残念なことに、遺憾ながら、俺には何の力も無かった。
うん。諸行無常、だよね。
そんな俺が、村から旅立つ実力ありの剣士様に縋りつき、心機一転というより人生まるまま賭けてチャレンジして勝ち取った成果が現状、なんだけど…。
相も変わらず、崖っぷち状態での綱渡りが続いている。はっはっはっはは。
人力車を牽く車夫としての地位は、取り敢えず死守。
ただ、まあ。
実力を買われて、といったポジティブな理由では無いんだよなぁ。
他に良い選択肢が無かったから、という消去法による暫定の結論なので、全く以って安パイなどではない。
女性二人連れのお供は、牽引のための腕力や護衛としての戦闘力が優れていても、ポッとでの見知らぬ男には任せられない。
だから。俺のこれまでの実績と信用で何とか首の皮一枚は残った、という状況。
つまりは、女性でゴスロリ魔術師エイプリルちゃんのお眼鏡にかなう人員が見つかれば、俺など即解雇の可能性大、なのであった。とほほほほ。
これぞ世界の摂理、って奴だよね。うんうん。
美少女二人とオマケ一人による、優雅な人力車の旅は、続行中。
俺と、俺が寄生していると言えなくもない凄腕剣士なアーヤさん。
辺境では大きめの農村が出身地となるこの二人にとって、一泊した街は、煌びやかな都会。
なんだけど...なんと、富と魔術の行使に不自由していないゴスロリ少女なエイプリルちゃんにとっては、ショボすぎる片田舎の地方都市、らしい。
エイプリルちゃんが辛うじて満足できるレベルの物品しか揃わない田舎の街に、長居は無用。
という鶴の一声で、早々に出発することが決まった。
けど、まあ。宿を発つのは昼前になった。
魔術師な美少女は、朝が弱かったのだ…。
「お姉さま、今日も良い天気ですわね(ハート!)」
「うん、そうだね。エイプリルちゃん」
早朝に起床し朝の鍛錬を一通り熟した後に朝シャンを浴びてサッパリし朝食もキッチリ平らげたアーヤさんは、いつもにも増してキラキラ。
寝起きの不機嫌さを綺麗さっぱり隠滅して爽やかな笑顔満開になってアーヤさんにベッタリなゴスロリ美少女なエイプリルちゃんも、通常運転でキャピキャピ。
うん。目に優しい光景、だね。
出来れば、ずっと、この光景だけを目にしていたい。
けど、何故か。
そこに、愉快ではない異物が、強引に割り込んでくる。
「オラオラ、そこの優男。ちょっと顔貸し…」
「邪魔ですわ!」
「へぶぉばぁ~」
前世記憶にあった世紀末漫画に登場しそうな筋肉馬鹿なモヒカン野郎が、また一人、ぶっ飛んでいった。
物理的に、俺の視野外へと、豪速で吹っ飛んでいく。
ゴスロリ魔術師な少女が、一言ボソッと唱える。と、世紀末モヒカン筋肉男の右横の空間に、巨大なハンマーが出現。
その漫画のような巨大ハンマーにガツンと一発お見舞いされ、雑魚キャラが、左方向の遥か彼方へと吹っ飛び。
役割を果たしたハンマーさんは、忽然と消える。
うん。ファンタジーだね。
この、宿を出立してから定期的に訪れる、ある意味でギャグ漫画における定番のようなシーン。
もはや、お約束?
なんか、街中で目を付けられて、待ち伏せされている?
いや、まあ、ね。
種類の異なる美少女が二人、屈強な護衛もなく、見慣れぬ荷車を牽く貧相な男が一人付いているだけ。
って認識されてしまえば、美味しいご馳走をゲットしようと有象無象が寄ってくるのも分からなくもない、んだけどさぁ…。
パッと見は、両手に花のモテ男。
でも、実態は単なる御付き従者。
って、客観的に見れば俺の状況は一目瞭然だと思うのだが、何故だか雑魚キャラが続々と釣れている。
しかし、まあ、次から次へと新たに湧いてくるモノ、なんだね、あれって。
ホント、不思議だよ。
宿を発ってから、これで何人目になるのやら…。
まあ、別に、良いんだけどね。
そう。実害はない訳だし、魔術の行使を何度もシッカリと見せて貰えるのがグッド。
しかも、魔術うんちくの解説付き、で。
いや、まあ。俺が勝手に拝聴しているだけ、ではある。
うん。単に、エイプリルちゃんがアーヤさんに私凄いアピールする会話を漏れ聞いている、だけだよ。
はっはっはっはは。
「と、まあ、そういう訳で、魔術が発動するんですの」
「ほえ~、エイプリルちゃんって、凄いんだね」
「ほほほほほ。それ程でも、ございませんわ!」
ありがたや、ありがたや。
あわよくば、俺も魔術を習得し、悲しいレベルの腕力しかない低レベル肉体労働者を卒業だ!
と思い、真剣かつ全神経を傾けて一言も漏らさぬよう吸収しようと...う~ん、微妙だね。
エイプリルちゃんって、実は、説明が下手?




