3.
元から武闘派という訳ではない、というか明らかに弱者の側へと分類されるレベルの残念な体格と体力しか保有していないタイプの俺は、ボコられた結果の病院送りから暫定復帰してのリハビリも兼ね、本日も、カテリーナ学園へと通ってきていた。
うん。今日も、カトリーナ学園の教室は、美少女と美少年がテンコ盛り状態だった。
が。心なしか、空気が暗いというか...微妙に、子ども達の人数も少ない、ような気がする。
学園の理事長さんと教師を兼任するカナちゃんことルビー色の光沢ある髪と大きな瞳がキラキラと眩しい童顔の美少女であるカトリーナさんも、今日は今一つ精彩を欠いている、ようだ。
うん。いつものキレがない、ね。
普段通りにニコニコと可憐な微笑みを子供たちに向けてはいるが、瞳に陰りがある、ような気がする。
いや、まあ。単なる俺の気のせいかもしれないけど。昨日の今日、だからねぇ…。
と、いう訳で?
本日の授業もそろそろ終わろうか、という時間になったところで...唐突に、第二幕が始まった。
まるで予定通りだと言わんばかりに、コンセプトは毒蛇と全身で主張する微妙なファッションと容姿で登場する成金趣味な悪徳商人風の中年オヤジが、頭の中まで筋肉で埋め尽くしたかのようなムキムキで下卑た雰囲気を纏う三下集団を引き連れ、またもや現れたのだった。
昨日と同様のシュプレヒコール(?)を型通りに展開し、今日も麗しいエカテリーナさんの眉間に皺を刻ませる。
うん、けしからんね。
怯える美形な子ども達と、毅然と対峙する可憐な美少女。
俺は、双方へと交互に視線を送りつつ、まずは両者の勢力範囲と人員配置の把握に努める。
下手なタイミングや位置関係で仕掛けると、本末転倒な事態が発生しかねないので、慎重に周囲を窺う。
さて、どうしたものだろうか。と、俺が思案していると…。
突然。
胡散臭さ満載なキラキラ爽やかタイプの体育会系っぽい美青年が、乱入してきた。
はぁ?
唖然とする、一同。
うん。何の予兆も脈絡もなく、さも当然と言った感じのしたり顔で平然と割り込んできたよ。
何だか無暗にキラキラしいオーラを撒き散らしながらの、颯爽とした登場だった。
そして。何の脈絡も前置きも解説もなく、一方的に宣う。
「俺に任せろ!」
白い歯をキラキラさせ、カトリーナさんに微笑む。
「結構です」
間髪入れず、眉間に皺を寄せ、嫌そうに即答するカトリーナさん。
「俺を信じろ!」
きらきら笑顔と爽やかさをパワーアップさせた爽やかイケメンは、カトリーナさんへと一歩近付く。
「無理です」
躊躇なく切り捨て、二歩下がるカトリーナさん。
「大丈夫だ!」
カテリーナさんの返事をきれいに無視し、自信満々の笑みを浮かべるキラキラ美男子。
「...」
毛虫を見るような蔑みの視線を飛ばす、童顔で可憐なカトリーナさん。
お、おぉおお~。
うん。なんか、新たな境地を開拓してしまいそうだ。
どんな表情でも、カトリーナさんは可愛いね。
なんだか、背筋がゾクゾクする新感覚の沼に嵌ってしまいそうになって、慌てて精神を立て直す俺。
はははは、は。
出来れば、可愛らしい女の子とは健全なお付き合いをしたいもの、だよね?
いや、ホント。見目麗しい上に無条件で親近感を抱かせる可愛さは正義だ、と思うけど...ねぇ。
と、まあ、兎にも角にも…。
俺は、唯々、可憐でクールな美少女から鉄壁な氷結の美女へと昇華していくカトリーナさんと、分厚いキラキラ笑顔で延々と力押しを続ける胡散臭いイケメン青年の、不毛な押し問答に圧倒されていた。
なんじゃ、こりゃ?
といった感じで、とことん話が嚙み合っていない二人。
一見すると美男美女による麗しいツーショットなんだけど、心情的にはブリザード吹き荒れる荒野の光景が展開されている。
あはははははは。
やっぱり、超絶美少女であるカナちゃんは最高だった。




